第20話 判決死刑
オークの集落って、重量級力士しかいないような光景だよね。
とは言え、みんな萎縮してしまって、こちらに干渉してくるのが一匹もいないのが、逆に気持ち悪いけど。
レヴァンの根回しが完全に効いているらしいのと、そもそも、ムダな事をする気力が残っていないのでしょう。
裁ばん広場。
デカブツがデカブツを詰問している現場に到着。
平伏している男も横綱のようだけど、そいつを仁王立ちで詰めるメスは更に二割増しでデカい。
何か、金ピカのケバい鎧……縦じま入った丸っこいフォルムの、マクシミリアン式甲冑を着込んでいる。
傍らに立て掛けてある、奴の背丈ほどもある巨大メイスはどぎついショッキングピンクだ。
こびりついた、赤茶色い血痕が良いコントラストを演出してるね……。
通り名の“黒”聖殺血悪はどこ行ったよ!?
「つまり、あなたの種でできたあのコが無能だったのは、あなたのせいなワケ」
「そそそ、そんな、そんなはずは!」
「だったらナニ? ワタシのせいだっての!? 畑が悪かったって言うつもり!? イマの発言で“極刑”は決まったね」
「違う、違います! お、俺の遺伝です! あいつが、女王さまの期待に応えられなかったのは!」
「そう。認めたね? じゃあ、判決死刑」
「嫌だァ! どうか、どうかお許しを! 次こそは天才を生めるように頑張りますから!」
はぁ。【分析】っと。
第七クランのサンドラ
【力:125(130) 体力:200(200) 知力:8(50) 反応:98(100) 器用:13(50)】
やれやれ。ボクは嘔吐した。
8って! はちって、何だよ!? 一桁とか初めて見たぞ!?
【反応】がほぼカンストなのは、理屈だとか論理だとかの一切を放棄した結果、アタマの全リソースを原始的なカンに振り分けられているからでは無いだろうか?
「なァに? こう、ふわっと、なんか、アレな感じがきたけど」
女王サンドラが、今更ボクらに目を向けた。
「あなた……首都の
ふざけろ!
ボクのプレートアーマーと、首都の衛兵が着ていた
兜の形状も、丸みのあるボクのと、バケツ型の衛兵のものとじゃ、まるで違うぞ!?
「イマ、裁ばんと死刑の最中だから、家畜にしてほしいなら、あとにしてくれない?」
殺す。
殺す殺す殺す殺す絶対に殺してやる細胞ひとつ残さず消してやる!
これほどまでに、他生命体に嫌悪と憎悪と悪寒と憤怒を感じたことはない!
「
ボクが指差し宣告してやると、
「あなた、極刑が決まったわ」
「あァ?」
「ワタシの二つ名を間違えたね?
は?
「この、
おい、ボクはちゃんと正確に覚えて来たんだぞ!?
レヴァンに、何度も確認して!
嫌な予感がして、彼を振り返ると。
オーク一番の賢人は、ただ沈痛に頭を振るのみだった。
おい、まさか。
コイツ、自分で自分に設定した二つ名を、端から忘れてるのか!
で、この口振りだと恐らく「その時にコイツ自身が認知している二つ名で呼ばないと極刑に処される」のだろう。
一応、今日のために一生懸命暗記したボクの苦労を返せ!
適当な漢字の羅列って、覚えるのすげー大変なんだぞ! 人の心をどこまで踏みにじれば気が済むんだ、この薄汚い排泄物にも等しいメスオークめが!
レヴァンが今日まで生きてこれたのは、最新のそれを常に把握し、完璧に呼び分けていたからなのだろう。
女王にそれほど近しくないヒトなら、二つ名を避ける文法で話すと言う逃げかたも出来るだろう。
どれだけ……こんな下らない事のために、どれだけの苦難を、彼らは!
大体、黒神“剣”って何だよ!
キサマの得物は、そこのメイスだろうが!
「ワタシがつけた大事な二つ名! ワタシはゼッタイに忘れない! それを忘れた下等なあんたが悪いの!」
あぁぁあァああぁああアァアああァアーッ!
ハァ、ハァ、ハァ……もうイヤだ。もう疲れた。
これ以上コイツについて考えると、気がおかしくなりそうだ。
もう、殺そう。
いや、邪聖剣に呑まれて成仏も許されず未来永劫肉体の無い感覚に苦しみ続け何億回・何兆回すら生ぬるい回数「死なせてください殺してください」と言わせ続けてやる!
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