第14話 殺っせ殺っせコロッセオ

 当たり前だけど、観客席から見下ろすよりも、舞台から見上げる方が広く感じた。

 ドワーフの店でちょうどいい革ベルトみたいなのがあったので、それで結束してチェーンソーを背中に吊ってある。いよいよ聖剣らしい扱いになったんじゃない?

 実際これ、大剣とか長柄武器を背負うための留め具らしくて、武器を使いたい時にワンタッチで外して使う。

 まあ、漫画とかでよくある鞘だと、背中からは抜けないだろうしね。

 観客席は大盛況だ。

 この世界ではニートであるボクに平日もなにも無いからいつでも良かったんだけど、やっぱり、フョードルの対決カードとなると休日になっちゃうようだね。

 あと、エルフやドワーフがチャレンジャーになる試合は特にチケットの競争率が高いみたい。

 俗に“スペシャルマッチ”と呼ばれて、ありがたがられるらしい。

 まあ、エルフの魔法とかドワーフの変態武器とかの方がエンターテイメントとしてもウケがよさそうなのは何となく想像がつく。気持ち悪いけど。

 バカみたいに騒いでるのは、やっぱりドワーフども。

 一方のハンターエルフや雑魚エルダーエルフどもは、いかにも観察と言うか考察をしてますよって、知的ぶったアホヅラを晒してて、静かなものだ。

 素直に楽しんでそうな家族連れとかもいて、そいつらの【知力】は相対的に低いんだろうな、とは思うけど、ボクはそれを馬鹿だとは思わない。

 あっ。ちなみにメスのドワーフは髭がないみたいだね。気持ち悪い。

 結構いい席にエルシィ発見。両手を組み、何かを祈るような顔でこちらを見据えてる。

 ドワーフとも雑魚エルフとも溶け込めないみたいで、そこだけ異物感ハンパない。キモーイ。

 

 観客席のドワーフどもが、一際熱狂し出した。

 ワー、ワー、うおおお! どこにそんな肺活量残してたんだか。

 ボクの反対側から、フョードルの入場だ。

 顔はツルツル。意外と温厚そうな、結構いい男だけど、首から下は白黒ツートンカラーの体毛で、シッポまでフサフサ。

 一刻も早く殺してやりたい、気持ち悪い外見をしている。

 手には、奇妙な形の剣を抜き身で持っている。

 何て言うかな、刀身は二本の螺旋が絡み合ったような形状で……例えるならハンドミキサーみたいな形してるの。

 フョードルは、それを高らかに掲げて見せた。

 また、ワー、ワー、うおおお!

 フョードル! フョードル! フョードル!

 ……だっさ。

 早くはじめてくんないかな。時間の無駄。

《間もなく、フョードル・ズァドル対レイ・シマヤの試合を開始いたします》

 ボクの気持ちを汲んでくれたのか、解説役が魔法による拡声でアナウンスした。

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