14話:正義の刃
リナーシャの退却から少し時間は戻り、路地裏前。ヴィブルの攻撃を正面からくらい、蹴り飛ばされもののミカルナが受け止め致命傷は免れた。
「ミカルナお姉ちゃん?」
「シーヴァさんお久しぶりですわ」
聞き込みをこなっていたミカルナだが、盗賊が出たという騒ぎを聞きつけ現場に急行した。すると盗賊一人ヴィブルとシーヴァの戦闘が繰り広げられていた。
ミカルナはすぐ加勢しようとしたが、シーヴァの負けず嫌いな性格を思い出し、具現化させかけていた剣を霧散させる。しかし遂にシーヴァが重い一撃をくらい吹き飛ばされた為、ミカルナはシーヴァを受け止めた。
ミカルナはシーヴァを立たせ、キトンの砂埃を払うと、近くに落ちていたタクティカルバトンを渡した。それからミカルナはヴィブルの方に向き直り、カーテシーをしてから名乗りを上げた。
「私はルシャールの乙女の一人ミカルナ。正義に服従する者ですわ」
「私はシーヴァ、純粋な悪意を宿す者です」
ミカルナに続きシーヴァも名乗りを上げた。ヴィブルは自身の状況が不利なことを察し、退却を視野に入れる。シーヴァの武器はタクティカルバトン。故に素手でも相手可能だったが、新手のミカルナは大剣を構えている。例えダマスカスのナイフがあったとしても、まともにやり合うのは難しいだろう。
ヴィブルが考えている間にも時間は進む。そして先に行動を起こしたのはミカルナだった。ミカルナは地面を一蹴りして、ヴィブルに肉迫する。咄嗟の判断であったが、ヴィブルは県の持ちてと剣先を掴み拮抗状態をつくる。無論、剣先を掴んでいるヴィブルの右手からは血がドクドクと流れている。
そして拮抗状態になったことに焦り、シーヴァがタクティカルバトン片手に走ってくる。このときミカルナは状況を打破することに夢中になり、シーヴァが接近しつつあることに気づいていなかった。しかしヴィブルだけはシーヴァの接近をしっかり目で捉えていた。
ヴィブルはシーヴァの接近と同時に足を出し、彼女を転ばさせる。ミカルナもシーヴァの存在に気づくが、ヴィブルから目を離してしまい、腹部に拳を一発お見舞いされた。
ヴィブルはいまだ出血している右手を見て、路地裏に入っていく。しかしそのヴィブルの右足を掴まれる。シーヴァだ。
「い、行かせませんよ……」
少女の執念深さに恐怖を感じたヴィブルは足を振りほどくと、シーヴァが落としたタクティカルバトンを拾い上げ、そのままシーヴァの顔面を殴りつけた。
骨が折れたような嫌な音と共に、シーヴァは寝たままの姿勢で五回ほど転がっていった。ヴィブルは一切の容赦なく、シーヴァを殴ったのだ。ヴィブルはのびているシーヴァの方にタクティカルバトンを投げると、そのまま路地裏に入っていった。
野次馬たちは騒ぎするものの、医者を予防とする者は誰一人としていなかった。ピクリとも動かないミカルナと血の池を作っているシーヴァを前に、パニックに陥りせいじょうな判断が出来ないのだ。
「はいはーい皆さんお静かに」
騒ぐ野次馬は自分たちの後ろから聞こえた、よく響く声によって静止させられる。その声の主はルシャールの乙女の一人オスタルだった。オスタは野次馬の間を通り抜けるとシーヴァを担ぎ、近くにいた若者にミカルナを担ぐように指示する。
「まったく私の天使たちに何してくれるのかな」
そう呟き、ヴィブルが消えた路地裏を睨むオスタルであった。
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