6話:ヘンテコな盗賊
ヴィブルが盗んだ果実を齧る後ろで、攫ってきたブロンド髪の女性と濡れ事に励んでいた。元神官であったラプームにとって禁欲は守るべき法の一つであった。しかし今、彼はその法を犯し涜神を働いていた。ブロンド髪の女性の反応が薄いのは仕方がないが、ラプームは物心ついてから初めて触れた女性の柔肌に驚いていた。
「女性がここま繊細なものとは……」
長い禁欲生活のせいで性的興奮すら忘れ去っていたラプームは、ブロンド髪の女性との濡れ事を交わしても、あまり楽しいとは思えなかった。やがて虚しくなったのか、ラプームはブロンド髪の女性を解放し塗り薬を渡した。攫う際、爪を立ててしまったことに対する贖罪のつもりだ。
一方ブロンド髪の女性は巨漢のヴィブルとラプームに、身体を好き勝手されると思っていただけにどう振舞えばよいのかわからなくなっていた。ヴィブルはそもそも女性に興味がないのか、一糸まとわぬ姿だというのにこっちを見ようともしない。ラプームの方も濡れ事こと半ば強制にさせられたが、最後まで至らず先ほどからずっと独り言を呟いている。
「あ、あのヴィブル……でいいのよね」
「用が済んだならとっと帰れ」
ブロンド髪の女性がヴィブルの背中に声を掛けるも、振り返りもせずぶっきらぼうに返事を返す。帰れって、攫ったのはそっちじゃないと心の中で悪態をつく。
「私はハニブ・リエル」
ブロンド髪の女性ことハニブ・リエルはもう一度、ヴィブルの背中に声を掛ける。自己紹介を兼ねて。すると肩越しにちらりとハニブを見たヴィブル。そしてため息を一つつき、大声で言った。
「おいラプーム!とっととこの女に服を着させろ、この馬鹿が」
「あぁすまない!」
相棒に怒鳴られたラプームは木箱の上に置いてあった服を回収すると、急いでハニブに手渡した。そしてあそこの物陰で着替えるといい、と建物の影を指して言った。そこはちょうどヴィブルとラプームから見て、死角になっていたためハニブは取り合えずそこで着替えることにした。
ハニブは服を着ながら盗賊のヴィブルとラプームに対する評価を改めていた。巨漢のヴィブルはそこそこ紳士的だし、先ほど肩越しに自身の裸体を見た彼が、頬を赤く染めていたことにハニブは気づいていた。そしてラプーム。ここまで全くと言っていい程、何を考えているのかわからない人物は彼を置いて他にいないだろう。表通りから自身を攫った時は、まさに悪鬼の如く爛々と目を輝かせて暴力を楽しんでいる様にさえ見えた。しかしハニブ自身と濡れ事を交わしていくうちに、段々と見た目通りの小男らしいビクビクした印象の人物へ変わっていった。まるで二重人格だ。と子供の頃、父の書斎で読んだ医学書の内容を思い出す。
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