坂崎里保の場合
「彰はね、私のことを愛してるわ、異常なまでに。あなただって、本当はそれにもう気付いているでしょう?」
ズキンと心が痛み、まともに坂崎さんの目を見ることができない。
「彰と結婚したら、お金の苦労はないってそう思ったわよね? 本当に、それはその通り。おかげでホラ、着飾ることもできるし旅行や食事もね、贅沢させてもらってるわ。でもね」
そっと彼女は長袖の腕を捲って見せた。
それからスカートを膝まで捲って見せてくれた。
新しいものや古いもの、紫に黄色に青色に。
坂崎さんの身体のあちこちに誰かに暴力を振るわれたような痣があった。
私も堀内さんもその悲惨な状況に、顔を歪めた。
「全部、彰がやったのよ。私が友達と会うのは、結婚してすぐに禁じられた。彼の会社の部下と挨拶するのも気に入らないみたい。とにかく私は家にいて彼の帰りを待って、彼とだけ話をしなきゃならないそうよ。今日のこの新しい顔の痣はね、彼の弟が家に遊びに来て話しをした、それだけよ? こっちの腕はね、先日彼と食事に行った際に、店員さんに私が笑いかけたって。君はすぐに他の男に色目を使うからって。そう、修二さんのことも、調べ済みだったわ。だから結婚当初は修二さんに連絡を取っていないかどうかを酷く疑われたわ」
ウッと唇を噛みしめて顔を覆い泣き出した坂崎さん。
ああ、私は気付いていたんだった。
彰が嫉妬深い男だということに。
いつも私の周りを伺っていたこともわかっていたというのに。
お金に目が眩んだのだった。
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