ハンバーガーヘヴン
アー
断章
薄暗い倉庫に身を潜める愚連な男たち。彼らの狙いは組織のボスを暗殺することである。全幅の信頼を寄せる〈アニキ〉が企む造反劇に加担しないわけにはいかない。鉄砲玉という名の捨て駒である男たちは〈アニキ〉から言われるがまま、ここでボスを待ち伏せている。ボスが来たら、撃つ。ただそれだけのことである。男たちにとってはとても分かりやすい作戦だったが、誰がどう考えてもうまくいくわけがなかった。とっくの昔に知性とサヨナラした輩はそこに気付けていなかった。
暗殺計画の実行犯となるべく集まった男たちのもとに〈アニキ〉から差し入れられたのは、黄金の
男たちの間に、他人のハンバーガーに対する憧れが生まれ始めていた。ただのハンバーガーの男はチーズバーガーに憧れ、チーズバーガーの男はダブルチーズバーガーに嫉妬し、ダブルチーズバーガーの男はビッグマックに羨望の眼差しを注ぐ。フィレオフィッシュの男は魚が挟まっていて御気の毒様である。兎に角、仲間同士の交戦も構わぬという徒ならぬ気配が充満したのである。これは彼らにとって悲劇の引き金であった。
ハンバーガーによって足並みの乱れた男たちはあっという間にボスから返り討ちにあって、片っ端から殺されてしまった。ただのハンバーガーの男の上にチーズバーガーの男が、その上にダブルチーズバーガーの男が、そのさらに上にビッグマックの男が折り重なって息絶えている。フィレオフィッシュの男もどこかに挟まっているであろう。十重二十重の屍はさながら大きなハンバーガーのようにも見えた。ボスは「ハンバーガーヘブンだぜ」と呟き、突然の空腹を覚えながら帰っていった。
ハンバーガーヘヴン アー @alikick
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます