第30話 カブトムシ
ぼくね、虫の中で一番すきなのはカブトムシなんだ!
だって、カブトムシってすっごいカッコいいじゃん! どの虫よりも大きくてね、強くてすごいんだ〜!
種類もいっぱいいてね、日本でよく言われるカブトムシっていうのは、ヤマトカブトムシっていう種類なんだよ。
有名なのとかだと、ヘラクレスオオカブトとかいるし、お店でよく見るのはアトラスオオカブトって言うんだ。
その他にもとってもキレイなコーカサスオオカブトとか、一番重くてでっかいゾウカブトとかもいるんだよ。
カブトムシって言っても、こんなに色んな種類がいるんだ。スゴイよね!
だからさぁ、すっごい強いカブトムシが欲しいってずっと言ってるんだけど、ママがね、虫が嫌いでいつも嫌な顔されちゃうんだよね。
パパは僕の味方だから、一匹くらい良いじゃないかって言ってくれるんだけど、ママはどうしても虫だけは駄目なんだって泣きながらごめんなさいってされちゃうんだよ。
ぼく、ママのこと大好きだから、ママがそんな風に悲しむならってがまんしなきゃならないんだけど、でもやっぱりカブトムシだけはどうしてもゆずれなくて。
それに、妹はいっぱいおもちゃを買ってもらえるのに、ぼくのカブトムシだけはダメなんだってずるいって思わない?
前に一度だけママに「妹ばっかりずるい!」ってもんくを言ったことがあるんだけど、その時、ママは、「虫だけはお願い。勘弁してちょうだい」って泣いちゃったから。
ぼく、ママのこと大好きだから、それ以上はなにもいえなかったんだ。
パパはママにないしょでカブトムシを買ってあげるよって言ってくれたんだけど、それでもやっぱり勇気がでなくて。だって、見つかったらママ泣いちゃうでしょ?
だからそれからずっとガマンしてた。
でもね。ついにぼくもカブトムシを飼えることになったんだ! ……というより、内緒で飼うことになっちゃったんだけど。
どういうことかって言うと、学校の帰り道でね、おじさんにカブトムシをもらったから。
おじさん、カブトムシを大事に育ててたらしいんだけど、何かじじょう? ってのがあって、飼えなくなっちゃったんだって。だから、代わりに飼って欲しいってお願いされたんだ。
ママにばれちゃったら大変だけど、ママにばれなければ大丈夫だよね?
だからこっそり飼うことにしたんだよ。
自分だけのカブトムシ、とってもうれしかった。
なぜか角が無かったんだけど、多分これ、メスなのかな? ゆずってもらったカブトムシだから文句は言わない。大切に大切に育ててたんだ。
でも……。
ママにばれちゃった。
「いやぁああああああああああああっっっっっっ!!」
カブトムシを見たしゅんかん、ママが大きなさけび声をあげてカブトムシをたたいたの。
ママよりもずっと小さいカブトムシは、ママのこうげきになんてぜったいに勝てないから、動かなくなっちゃった。すごくすごく悲しかった。
おじさんからゆずってもらった大切なカブトムシだったのに、こんなことなら飼わなければよかった。
動かなくなっちゃったカブトムシをパパと一緒に公園にうめに行ったとき、いっぱいいっぱいなみだがあふれてきた。
ごめんね、ごめんね、って。なんどもなんどもあやまって。でも、いっぱいあやまってもぜんぜんかなしいは消えてくれなくて。
パパがやさしく頭をなでてくれたけど、ぼくのせいでカブトムシはしんじゃったんだから、ぼくはバツをうけるべきなのかもしれない。
その日は、カブトムシのことを考えてしまって眠れなかったんだ。
きせきっていうことばをおもいうかべたのは、それから三日くらいすぎたときだったかな?
いなくなっちゃったカブトムシのケースの中に、幼虫が一匹いたんだよね。
その幼虫は、今まで見たことないくらいおっきい子で、なんかもぞもぞ動いてた。
こんどはぜったい殺させない。
だから前以上に注意して、ぼくはこっそり幼虫を育てることにしたんだ。
幼虫はいっぱいたべて大きくなっていったんだよ。でも、この幼虫ちょっとへんなんだ。
カブトムシが好きなはずの食べもの以外もいっぱいたべるんだよ。
たとえばハエとか。たまたまケースの中にはいったハエを食べたときはびっくりしたっけ。
それから、ぼくは、いろんなものをこの幼虫にたべさせてみた。幼虫はすききらいがないようでほんとによくたべてくれたんだ。
そんな幼虫がね、最近ママにきょうみをしめした? って感じにみえるんだよね。
ぼくはママが大好きだから、ママを食べさせてあげられないんだけど、幼虫はママのことを食べてみたいらしい。
あっ! そうか!
ママがカブトムシになっちゃえば良いんだ!
ぼくってなんてあたまがいいんだろう!
だって、大好きなママと大好きなカブトムシがいっしょになれば、けんかしないですむもんね。
ねぇ。ぼく、まちがってないよね?
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