第54話
「さやちゃん!」
はっとして顔を上げると、何故かお姉さんがいた。
え?
お姉さんはあたしの顔を心配そうに覗き込んでいる。
あたしはお姉さんの胸に飛びついた。
お姉さんに抱きしめられると、胸の空洞は徐々に小さくなっていった。
そうしたら急に悲しくなって、わあわあと泣いた。
パパに気づいてもらえなくて、、会えたのに会えなくて、、
そんなことも泣きながら話した。
「そうなの、、てんくんの新しい
お姉さんは驚いたようだったが、しばらく考えた後言ってくれた。
「今はだめでも、いつか見えるようになるかも」
「ほんと?」
「気持ちに変化が出たら可能性はあると思う。だから気長に待と?」
あ〜それなら希望はあるんだ。
あたしの胸は今度はほっこりした。
「それはそうと、どうやってここに?」
しばらくしてお姉さんがそう言った。
何のことかと顔を上げて周りを見ると、そこは病院じゃなかった!!
「…ここ、どこ?」
「私の家よ」
「えっ、奥多摩なの?」
「あ〜そうじゃなくてね。平日いるマンションなの」
何と、お姉さんたちは週末以外は都心に近いこっちのマンションにいるんだって。
今週はたまたま用事があって、お姉さんだけ週末もこっちにいるそうだ。
いや、そんなことより何故ここに来れたんだろう?
「お姉さんって呼んだら、なんでかここにいたの」
「ええ〜…じゃあ、タマちゃん!って言えばタマちゃんのところに行けるかしら?」
ええ〜そんな素敵なことがあるのかしら?
あたしは思わず両手でほっぺたを押さえてしまった。
「さやちゃん、言ってみてよ!」
お姉さんもちょっと興奮気味だ。
ほんとに行けるかな〜
あたしはうなずいて、どきどきしながら言ってみた…「タマちゃん!」
「おや、さやちゃんじゃないか!」
あたしはおやつを食べているタマちゃんの前にちんまり座っていた。
…なんだか見覚えのあるシーンだ。
「わ〜ほんとに来ちゃった!!」
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