第52話

しばらく経った頃、てんくん一家は竹内 医師せんせいと話合いをもつことになった。

手術に入るまでに何回かそうした意識のすり合わせをするようだ。

そのうちに竹内 医師せんせいの所に転院することになっている。

それを聞いて、あたしはついて行けるかな〜とちょっと心配だ。

だって、今のところこの病院から離れられないんだもん。

心配させるから、てんくんには言えないけど。


それはそうとあたしは竹内 医師せんせいが気になっていた。

何故か名前を聞くとざわついた気分になるの。

それで話合いがされる予定の部屋に早めに行ってみようと思った。

もちろん、姿を消してね。


エレベーターで上の階のその部屋まで行ってみる。

小さな会議室といった感じの部屋で、今は誰もいない。

窓から河の流れる気持ちのいい景色がよく見えた。

外の景色に気を取られていると、人が何人か部屋に入って来た。

「こちらでお待ちいただけますか? あと10分程で皆んな揃うと思います」

「わかりました」

一緒にいた事務員らしき人がお茶やコーヒーのセットを置いた。

「竹内 医師せんせい、コーヒーお入れしておきましょうか?」

「いえ、自分で入れますので」

じゃあと案内してきた2人は出て行った。

あたしは『竹内 医師せんせい』のちょっと影のある顔を見つめた。


ああ、そうだったんだ。

だからこんなにも心が騒いだんだ。

だからこの前もこの病院にいたんだ。

竹内浩太朗、、あたしのパパ!

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