第51話
次の日、目を覚ましたてんくんは何故か少し考え込んでいた。
そしてあたしの顔を見て言った。
「ボク、さやちゃんにお礼しなきゃ」
「えっ? なんで?」
「さやちゃんがいたから、手術しようって気持ちになれた気がするの」
ええ? なんの関係が?
「さやちゃんがボクの所に来たのはその為だったんじゃないかなって」
う〜ん、、それはあたしにも分からないな〜
「だからね、さやちゃんの好きな珪藻の絵を描いてあげる」
てんくんの絵かあ、、それはちょっと嬉しいかも。
「綺麗に仕上げるから期待しててね」
「うん!ありがとう!」
その後午前中いっぱい、てんくんはあーだこーだ構想を練っているようだった。
てんくんの真剣な顔をあたしは微笑ましく見ていた。
いくらギフテッドでも絵が上手いとは限らないが、楽しみだ。
お昼を過ぎた頃、病室にひょっこりタマちゃんが現れた。
「タマちゃん!」
あたしは嬉しくてタマちゃんのところまですっ飛んで行った。
タマちゃんはあたしの手を取ってほっとしたように笑った。
「七緒ちゃんに聞いたけど、自分で確かめないと安心できなくてね」
あたしはタマちゃんに抱きついて、ちょっと泣きそうになった。
タマちゃんはてんくんともしばらく仲良く話している。
なんだろう、お婆さんと子供って妙に話が合うんだよね。
「そうかい、じゃあさやちゃんが来たことは良かったんだね」
「うん、そうなの。ボク心強かったし」
「それなら、さやちゃん居なくなってびっくりした甲斐があるってもんや」
てんくんは少し申し訳なさそうな顔をした。
「座敷童子は幸運をもたらすと言われてるんだよ。知ってるかい?」
「うん、おかさんが言ってたから」
タマちゃんはニコッと笑った。 “おかさん”が面白かったかな?
「七緒ちゃんもさやちゃんが来てからよく笑うようになったんだよ」
そう言えば、、
「だからてんくんもきっと大丈夫!」
タマちゃんはそう言っててんくんの頭を優しくなでた。
タマちゃんは帰る前に持っていた手提げ袋を開いた。
取り出したものを見て、、
「あっ、あたしの‥」
「さやちゃん、置いたまま消えちゃったからね…」
タマちゃんは赤い帯飾りを巻いて結んでくれた。
「こっちの背守りは縫い付けてあげようね」
そう言って小さな裁縫セットを出し、あたしの着物の背に付けてくれる。
その後、タマちゃんは名残惜しそうに帰っていった。
「てんくん、どう?似合ってる?」
「すっごく良いよ!歩くと背中のストラップが揺れて可愛いや」
「やった〜」 あたしはぴょんぴょん跳ねて、ニンマリした。
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