第50話 決意
次の日、てんくんのお父さんとお母さんがやって来た。
てんくんは嬉しそうに、莉奈さんとお姉さんが来てくれた時の話をする。
二人もそれを聞いて嬉しそうだった。
しばらく楽しく話していたが、お父さんが急に真面目な顔になって言った。
「天音、今日は相談したいことがあるんだ」
てんくんはちょっと驚いた顔をしたが、大人しくうなずいた。
「そう言う訳で今の状態だと治療方法としては手術になるようなんだ」
「うん、そうじゃないかと思ってた」
「ただ、神経を痛めてしまうと障害が残ることがある」
てんくんは黙ってお父さんの顔を見上げた。
「このまま治療せず、もっと腫瘍が大きくなったらということもできる」
「そうよ。その時になったら化学療法もできるようになるかもしれないわ」
「ただ手術するなら腫瘍の小さいうちがリスクが少ないからね」
てんくんは考え込むような表情になる。
「腫瘍が見つかったのは頭を打った時の検査でだったろ」
「うん」
「普通なら眼の調子や頭痛吐き気という症状が出るまで気づかないものなんだ」
「そうだね、ボクもなんにもつらくなかったし」
「そういう意味では、これはチャンスだったとも言える」
てんくんは頷いている。
お母さんが心配そうにてんくんを見ている。 どうやら手術が不安なようだ。
でも必要以上にそれを口にしないでいる。
「ボク、手術を受けようと思う。 竹内
てんくんが勇ましく言った。
「…そうか。 佳苗、それで良いかな」
お母さんの名前、佳苗って言うのね。
「…うん…うん…てんくんがこんな顔して決めたんだもの」
お母さんは涙ぐんで言う。
お父さんがお母さんの肩に手を回して励ますように抱いた。
その後てんくんを挟んで三人で寄り添っていろいろ話しだした。
あたしはちょっと羨ましいな〜と思いながら病室を出ることにした。
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