第49話
「てんくん、何時になく明るい顔だし前向きね」
莉奈さんが感心したように言う。
てんくんは少し恥ずかしそうにあたしの方を見た。
「ふ〜ん、さやちゃんがいてくれるから?」
莉奈さんが面白そうに口を歪めた。
ほんと? あたし、役にたてたのかな〜
「さやちゃん、ありがとう! これからも仲良くしてあげてね」
そう言って莉奈さんは、お姉さんとは雰囲気の違うおきゃんな笑顔を見せた。
「うん、まかせて!」
二人が帰る時間になると、あたしもお姉さんも流石に寂しい気持ちになる。
「また来るわ、さやちゃん」
「うん、絶対だよ」
二人が手を振って帰って行くのを見送ると、うんと寂しくなった。
「てんくん、あたしもうちょっとお見送りしてくるね」
あたしは姿を消して二人を追いかけた。
追いついた時二人は話し込んでいた。
「じゃあ、手術は危険かもしれないのね」
「前に聞いた話ではかなり難しい位置らしいわ」
「神経の集中する位置って言ってたわね。手術テクニックがいるのね」
「そう。てんくんが言ってたように、なかなか信頼できる
「どうなるか心配ね」
「今はさやちゃんが付いててくれるから心強いわ」
「そうね。不意にいなくなって驚いたけど、てんくんのとこにいたなんて…」
「七緒と離れてしまって不安だったでしょうに」
「あんな泣き方するなんてビックリした…」
「私も… 涙が出てない分、痛々しい感じがしたわ」
わあ、お恥ずかしい、、
「今日はありがとうね、七緒」
「ううん、私こそ。莉奈のお陰でさやちゃんに会えたもの」
「このあとどうするの?」
「うん、今日は実家に泊まって、明日はタマちゃんに会いに行くわ」
え〜お姉さんだけ、ずるいよ〜
病院の玄関を出て行く二人を見送って、あたしはちょっとプンとなった。
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