第46話 出会えた人
あたしはそのまま長い間わーわーと泣いていた。
おじさんが一人、あたしをのぞき込んで困った顔をしている。
でも子供に慣れていないのか声をかけられないでいる。
そこへあわてたような足音が近づいてきた。
「さやちゃん!」
そう言ってあたしの方へかがみ込んだのは何とお姉さんだった!
「ひっく…お、お姉さん!お姉さん!」
あたしはお姉さんの首にかじりついた。
そしてたがが外れたようにごうごうと泣いた。
「ど、どうしちゃったの、さやちゃん。私が来たもの大丈夫だから!」
お姉さんはあたしをぎゅうっと抱きしめてくれた。
でも、あたしは泣きやめないでいた。
急にお姉さんの家からここへ来ちゃったのが本当に悲しかった。
気にしないようにしてたけど、そうだったんだ…
そして何より今は、パパに追いつくことが出来なかった。
そんなこんながぐるぐる渦巻いて、胸がふさがったような気分だった。
そのあと、やっと泣きやんだあたしを連れてお姉さんは歩きだした。
泣いてる時、お姉さんの後ろにもう一人女の人いなかったっけ?
途中でお姉さんがその人に何か言っていたみたいだけど…
それにこんなに泣いた後でてんくんに会うの恥ずかしいな。
そんなことを考えていると、お姉さんは病院内併設の喫茶店に入った。
奥まった窓際に座って、自分にコーヒーとあたしにジュースを注文した。
ジュースは泣いた後の喉には気持ち良かった。
「さやちゃん、何があったの?」
「…うん、パパがね、いたの」
「えっ? 本当?!」
「…でもあたしがすぐに気づけなかったから、追いつけなかった…」
「でもまた病院に来る可能性があるわね」
「そうかな〜」
「何もなく捜している時よりは可能性高いと思うわ」
そう聞くとあたしの胸はほっこり暖かくなった。
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