第41話
てんくんが眠っている時、あたしはよく病院を歩き回る。
病院の中を、又は病院から、どこまで歩いていけるか調べる。
ここは大きな病院の6階。
5階と6階が小児治療階になっている。
でも皆んな言いにくいせいか「子ども病棟」って言っちゃうんだ。
あたしはの行動範囲はまた縛られている。
でも、1階の外来から円形の車寄せを通って道路脇までは行けた。
それから、てんくんの部屋に来てくれる子たちをそれとなく見て回る。
入院して来る子は、最初とても辛そうだけど、どんどん元気になる。
先に希望が見えるのは素敵なことだ。
でもてんくんのように足踏みしていたり、亡くなることだってあるんだ。
もうてんくんに泣いてほしくない。
幸いどの子も徐々に快方に向かっている。
てんくんの病室に来てくれる子たちはあたしのことを知っている。
あたしが座敷童子だと分かると、皆んなで手を繋いだり腕を組んだり。
そしてきゃーと可愛く歓声をあげた。
今では「さやちゃんのことは秘密だよ」と皆んなで約束してる。
皆んな曰く『さやちゃん同盟』だそうだ。
この子達は小学生で、14歳だったタカくんは皆んなのお兄ちゃんだった。
てんくんは一番小さかったから、ずいぶん可愛がってもらったようだ。
特にてんくんが『粘菌』のことを話すのを興味深く聞いてくれていた。
音楽の才能があったらしく『粘菌狂想曲』と題して作曲もしてくれたそうだ。
看護師さんが話してたように治療もほんとうに頑張ったのに力尽きたのだ。
そりゃあ、てんくん泣くわ。
「ちょっとね、『粘菌』になって冒険してる気分になるの」
と、てんくんは手放しでその曲をほめた。
一度聴いてみたいものだ。
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