第40話

「そうだ、あたし、小さい頃粘菌を見たことあった」

「そうなの?」

「うん、散歩に行った時あったの。てんが不思議そうに匂いを嗅いでた。」

「てん?」 てんくんはこてんと首をかしげる。

「昔飼ってたうちの犬。 名前一緒だね〜」

てんくんがキャッキャと笑う。

「あの時はあたし、理解できない気持ち悪いもんだと思っちゃったな〜」

「あ〜、変形体の時でしょ。アメーバーみたいにへばりついてるの」

「そうそう。絶対さわっちゃいけないもんだと思ったよ」

「ぷぷ、分かるけど。粘菌の毒性は報告されたこと無いから大丈夫だよ」

「そうなんだ」

「ボク、ゆっくり動くアメーバーくんもすごく面白くて大好きなんだ」

「そうだね、あたしも見方が変わったと思う」


その後少し、てんの話しをせがまれた。

「てんは朝の散歩が大好きでね〜 よく河川公園まで歩いて行ったの」

てんくんは瞳を輝かせて聴いている。

「茨田の石」のところで立ち止まって、パパに由来なんかを聞いたときのこと。

てんはリードをいっぱいまで引っ張って、足をカリカリさせていた。

待てないようって顔してたな〜

「……なつかしいなぁ」 てんくんが小さく呟く。

………

「えっ?」

「ん?」

「てんくん、なつかしいって…」

「あれ? ボクどうしてそんなこと言ったのかな〜」

ふん?

てんくんって…ひょっとして、てんの生まれ変わりだったりして?

…まさかね。


「それより、さやちゃん。座敷童子にも小さい時があったの?」

「…あっ、言ってなかったね。 あたし普通の小学生だったの」

「ええっ」

「転生ってやつみたい。 自分でもびっくりしちゃったよ」

「てんせいって…チートもらう、あれのこと?」

「そう。悔しいことにチートは無かった」

てんくんはえっという顔をして

「…あるじゃない。 姿消したり、通り抜けたり」

「あれ? …そう言えば」 

あたしはちょっと赤面した。

「損したな〜なんて思ってたよ〜」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る