第39話 南方熊楠

『粘菌』の話をしてたりして、のんびり過ごしているように見えるよね。

でも、ここはやはり病院という名の戦場。

てんくんの病名は脳腫瘍、頭蓋底とうがいてい腫瘍という難敵だ。

化学療法が身体に合わず、拒否反応がきついので現在休止中らしい。


最初、手術も検討されたけど、位置が悪すぎたのか化学療法に切り替わった。

でも、吐いたりなどの拒否反応が子供の許容範囲を超えると判断された。

本末転倒な症状では続けられない。

今は次の治療方法を検討しているらしい。


だから今のところあたしはてんくんの好きなことを一緒に楽しんでる。

てんくんはあたしという聴衆を得て、嬉々としていろいろ教えてくれる。

病気のことも忘れたようにね。

今日は「知の巨人」と言われた南方熊楠みなみかたくまぐすの話だ。



南方熊楠は日本の博物学者・生物学者・民俗学者として知られている。

欧米で高まった『変形菌』研究の波を受け、米英に留学して研究。

粘菌以外にも、キノコ、藻類、コケ、シダ、小動物、星座まで研究していた。

これらの研究で西欧をも席巻、『ネイチャー』に51本もの論文を掲載した。

これは単独掲載の本数としては、現在でも歴代最高記録を誇る。

語学も西欧言語は軒並み、ロシア語、ラテン語までくした。

一つの論文を数カ国語で複数作るなど、驚きの能力だ。

熊楠によって、最初の日本産変形菌目録もまとめられた。

鎮守の森、和歌山の神島の保護運動で、自然保護運動の先達ともされている。

ところが奇抜な言動や性格で、後世に数々の逸話も残している。

彼の論文は結論が無かったり、隣人の悪口や猥談が挟まれていたりする。

柳田國男などはこれにずいぶん苦言を呈したという。


自由人だ。 面白すぎる。

とにかくファーブルを知っていて熊楠を知らないのはいびつに思えるほどだ。

小学校でも教えてくれたら良かったのに。

えっ、熊楠の出身の和歌山なら教科書に載ってるの? ふ〜ん

てんくんの講義(?)には引き込まれてしまう。

てんくんがこんな講義(?)をしていると、教授と呼びたくなるよ。


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