第32話
その電話は、お兄さんの奥多摩のお友達が家の事を知らせるものだった。
積もった大雪が窓の一部を壊したらしい。
年末で修理の手配も出来ない。
お兄さんは急遽、自分で修理するため奥多摩へ行くことになった。
お姉さんも仕事がちょうど終わるので、後を追って手伝いに行くらしい。
「さやちゃん、年末一緒に過ごせないけど、お正月までに帰ってくるからね!」
次の朝、身の回りの物をまとめ、そう言ってお姉さんは出かけた。
お正月はタマちゃんが娘さんちで過ごすため、お姉さんは気にしてくれている。
確かに、お正月に一人ぼっちはちょっとイヤかな〜
あたしはどこにも行けないしね。
今日も今日とて、タマちゃんとあたしはまったりアフタヌーンティー。
今日のお茶は烏龍茶です。
タマちゃんはとうとう猿島烏龍茶をお兄さんから手に入れたらしい。
中国茶の茶壺(急須のこと)や茶杯は小さいからと、小ぶりの急須で代用。
お花のような香りがする美味しいお茶がはいった。
これもお兄さんがくれた台湾のお菓子と一緒にいただく。
「あ〜 落ち着くね〜」
タマちゃんは小さな湯呑みを両手に包んで、お茶の香りを楽しんでいる。
「お正月もみんなで過ごせたら良いんだけど、娘の機嫌が悪くなるからね〜」
「そりゃあそうだよ。たまには顔を見て安心したいと思うよ」
タマちゃんがあたしたちと一緒にいたいと思ってくれてて嬉しいけどね。
「でもそれまでは二人だから、タマちゃんに思いっきり甘えちゃうもんね」
「おまかせあれ〜」
タマちゃんがあたしをぎゅーと抱きしめながら言う。
そんな風にして、タマちゃんと二人できゃらきゃらと笑いあった。
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