第31話

今日はお姉さんは仕事納めです。

あたしはタマちゃんちで、お兄さんと3人でお昼ご飯中。


「この間は楽しかったね。さやちゃんのお料理も美味しかったな〜」

お兄さんが漬け物をつまみながら言う。

タマちゃんの娘さんが送ってくれた冬の漬け物だ。

白菜のふすま漬け、かぶら漬け、べったら漬け、どれもほんとに美味しい。

「うん、そだね〜」

あたしはタマちゃんに付けてもらった帯飾りを見てにまっと笑う。

お姉さんの背守りは帯に挟んで、時々取り出して見ている。

タマちゃんも肩掛けをかけていたけど、食事中は心配だからとはずしていた。

「楽しかったね〜 これまであまりクリスマスには興味なかったけど」

タマちゃんはそういって、満足そうに溜息をついた。

タマちゃんが楽しめてほんとに良かったな〜


その時あたしのお箸から、かぶら漬けの葉がぽっとんと落ちた。

「あー‼︎ 帯飾りが〜」

赤い紐に緑のかぶらの葉が乗ってきれいだ…いや、そこじゃない!

タマちゃんがティッシュでサッと葉を取り、帯飾りを外してくれた。

「さやちゃん、今のうちにチャチャっと拭いてあげるからね」

「うん、ありがと〜」

挟んでた背守りも汚れなかったか取り出して確認。 大丈夫そうだ。

「食べる時は外しといたほうが良いね」

タマちゃんは帯飾りの汚れを取ってから、背守りと一緒に横によけて置いた。


「そうそう…クリスマスの日七緒ちゃんがくれたお菓子、出そうかね」

食事が終わるころタマちゃんが言う。

お姉さんが東京で買ってきた…え〜と…パー…パートドフリュイ!だよね。

たくさん料理があったから、今度にしようと言うことになったの。

「東京事務所の人が美味しいって教えてくれたらしいよ」

お兄さんもそれを思い出して、楽しみらしい。


水屋から、タマちゃんちにはあまり似つかわしくないお皿が出てきた。

白っぽい平皿は、縁に水玉がたちあがり王冠のようだ。

そこにタマちゃんは宝石のようなお菓子を乗せていく。

可愛すぎる〜 小ちゃな四角いゼリーは色とりどりでファンタジックだ。


紅茶を淹れ、どれにするか迷った後、三人でパクッと口にいれた。

口の中で広がった酸味のある味に、三人で顔を見合わせる。

ん〜〜なんか美味しい! ちょっと食べたことない味!

タマちゃんが包装紙を見て、「オー、◯ン、ビュータン」と店名を読んでいる。

「これ、クセになりそうだ!」お兄さんも気に入ったらしい。


みんなで満足気に溜息などついていた時、お兄さんの携帯が鳴った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る