第30話
クリスマス寒波だなんて言って、その日は大阪にさえ小雪が舞った。
お姉さんの部屋はクリスマスデコレーションでとても素敵だ。
外の寒さをよそに部屋はぬくぬくだしね。
お兄さんが貰ってきた本物のツリーはクラシックな雰囲気に仕上がった。
色が少なめのツリーはかえって上品だ。
昨日から仕込んだお料理もサラダもケーキも幸せな顔をして並んでいる。
星や雪だるまに抜いた形が散りばめられて華やかだ。
「メリークリスマス!」
みんなで声を揃えて乾杯した。
ああ、お姉さんもタマちゃんもお兄さんも幸せそうな顔だな〜
みんなで色んな話をした。
お兄さんが例の座敷童子が出て来る絵本で新たに賞を貰った話。
お姉さんが東京事務所に挨拶に行った時の話。
タマちゃんの遠縁の息子さんが1月にはここに住み始める話。
あたしは思い出せたママとパパとで過ごしたクリスマスの話。
新しい奥多摩の家の話。
喋り疲れた頃、プレゼントの交換ということになった。
お兄さんとお姉さんからタマちゃんにすごくキレイな毛糸の肩掛けが渡された。
わーお! 肩にかけてみたタマちゃんが何時もにまして上品で可愛くみえる。
「タマちゃん、すごく似合ってる!」
「有難うね、二人とも。大事にするよ」
次にお姉さんはあたしに小さなフェルトで作ったものを渡した。
キツネ‥じゃなくて招き猫かな? 刺繍で可愛いこれはストラップ?
「これはさやちゃんの背守りにと思って作ったの。デザインは悠くんよ」
「ちょっとキツネみたいだけど、住吉大社の招き猫だよ」
「可愛い〜」 あたしは見入ってしまった。
「付けてあげようか?」
お姉さんはそう言ったけど、背中に付けたら見れないから後にすることにした。
タマちゃんは二人に手ぬぐいハンカチを渡した。
あたしの知らないうちに刺し子が施されてとても素敵だ。
「使いやすそうだ。有難う、タマちゃん」
「有難う!素敵だわ」
タマちゃんはにっこり笑って、もう一つ取り出した。
「はい、これはさやちゃんに」
「タマちゃん、こっそり作ってたの?」
見てみるとそれは、細長い赤い紐に一部刺し子が施されていた。
「これは?」
「さやちゃん、服が着替えられないだろ? だから帯飾りだよ」
「わあ! 気が効きすぎだよ!タマちゃん」
あたしからのプレゼントは今日の料理で良いって言われてたんだけど…
何か作れば良かったな〜
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