第29話

今日はタマちゃんちに場所を移し、あたしはオーナメント作りの真っ最中。

お姉さんのご両親がお姉さんちに来たから。


お姉さんのお母さんは、なんでこんなに急なのよと言いながら嬉しそうだった。

ちなみにお母さんにはあたしが見えるけど、お父さんはさっぱりだ。

タマちゃんのところに挨拶に来て、女性陣が残って少しお喋りした。

お姉さんにあたしのことを聞いたお母さんは、あたしをぎゅっと抱いてくれた。

「さやちゃん、有難う。七緒を守ってくれたのね」

お姉さんによく似た顔でそう言ってくれた。

お姉さんが一人暮らしを始めて半年ほどは時々お母さんも来ていたとのこと。

仕事が忙しくなるとともに、お姉さんは理由をつけて断っていたらしい。

お姉さんがそんな状態だったと聞き、お母さんは胸の潰れる思いがしたようだ。


明日は悠くんのご両親と顔合わせをするらしい。

お姉さんのおじさんがオーナーのビストロオリタというお店を予約していた。

お兄さんと二人で食事にも行っていたらしく、、

「洋輔の方が先に会ってるなんて!」と、お母さんは釈然としない顔だ。

オーナーの洋輔さんは、お母さんの歳の離れた弟だ。


あたしは今日はタマちゃんちに泊まるつもり。

親子水入らずというのもあるけど、お父さんはあたしが見えず、色々都合が悪い。


部屋にはオーナメントのクッキーを焼く匂いがふくふくと漂っている。

来週のクリスマスイヴのアフタヌーンパーティの準備は着々と進んでいる。

タマちゃんはプレゼントに日本手ぬぐいでハンカチをつくっている。

汗をよく吸うから夏向きだけどねとタマちゃんは笑って言う。

でも模様は冬らしく、雪を降らせる小鬼が地上で雪だるまになる絵が可愛い。

二枚切りにして使うんだけど、お兄さんとお姉さんのが合わさり一枚の絵になる。

いつまでも仲良くというタマちゃんの気持ちだろう。

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