第27話
タマちゃんと2人で大福餅とお茶を前にするとあたしの気持ちはふっくらした。
二人とも大福をひとつ頬張って、にまって顔が緩んでいる。
「簡単に作ってたけど美味しいね〜」
「お茶も美味しいな〜 これ何処のお茶?」
「さやちゃん、お茶が分かるとは渋いね」
えへへ ‥タマちゃんの影響かな‥
「たしか静岡の猿島茶って言ってたよ。 悠くんが持って来てくれてね」
「さしま茶…ああ、お兄さんが烏龍茶が美味しいって感動してたとこだ!」
「そうなのかい? 今度それも欲しいって頼も」
この遠慮のなさは、まさしく家族だね。
「それでさやちゃんは、どうして落ち込んでたの?」
「あたしね、お姉さんに無理してほしくないの」
「うん」
「だけどお姉さんは、あたしのママを捜すのが先だって思ってる。優しいから」
タマちゃんは黙って聞いてくれる。
「それなのにあたしは、ママにやっぱり会いたいの…」
タマちゃんはふっと微笑んで、あたしの頭を優しくポンポンとたたいた。
「ちっとも恥ずかしいことじゃないよ。自然な感情だもの」
「あたし、わがままじゃない?」
「だいじょうぶ。 それにそんなに堅苦しく考えることもないと思うよ」
どういうことかな〜
「さやちゃんが来てから、七緒ちゃんの生活はうんと良くなったやろ?」
「うん、お姉さん、明るくなった!」
「七緒ちゃんの頑張りもあったやろけど、きっかけはさやちゃんなんだよ」
「うん、お姉さんがありがとうって言ってくれて嬉しかった」
「だからこそ、さやちゃんの役に立ちたいと七緒ちゃんは思ってるんだよ」
‥あたしだってそれは分かってる。
「それが七緒ちゃんの自然な気持ちってことや」
タマちゃんはあたしを覗き込むように言う。
「そういう気持ちを受け取るのも優しさなんやで」
‥う〜ん、そう言うものなのかな。
「でもね。難しく考えんでも良いんやで」
えっ?
「これからは、さやちゃんの思い出した事は私が伝えれば良いしさ」
あたしはキョトンとした。
「だから! 引っ越してからだって、ネットさえあれば調べてもらえるよ」
「!! わあ〜そうだね!」
「七緒ちゃんに、そんなふうに言ってみたら良いんじゃないかね」
なあ〜んだ。
二人でにま〜として、大福餅をもうひとつ頬張った。
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