第23話

あたしがアドベントカレンダーを幾つかめくった頃、二人は仲直りしていた。

ちょっとバカバカしくなったらしい。

あたしはほっとしたけど、問題は解決していない。


お姉さんは次の土曜日にまた莉奈さんと病院に行くと言った。

「何回も行くんだね〜 その子の病気、良くないの?」

「うん、今の治療でも良くならないと危ないって…」

「ふ〜ん、心配だね〜」

「このあいだ会ったけど、可愛い子だったな〜」

お姉さん、子供好きなんだね。

「明日はお見舞いのオモチャを買いに行くつもりだから遅くなるかも。」


次の日の夕方、今日の晩御飯は何にしようかなと考える。

お姉さんは遅くなりそうだから、軽くて温まる小さなお鍋を準備しておく。

そうだ、タマちゃんが菊芋の味噌漬がちょうど食べ頃だって…貰いに行こう。

タマちゃんは菊芋をそのまま薄切りにしていろんな和え物にもしていた。

定番マヨネーズ和え、ヨーグルトディップ和えなど、けっこう乙な味なのだ。

階段を下りてタマちゃんの部屋の方へ行った時、お姉さんが帰って来た。

あたしに気づかず階段をあがっていく。

どうしてこんなに早く帰って来たの?

ちょっと面白くなって、あたしは姿を消して、後ろからそおっとついていった。

姿を消せるのかって? そうなのよ、最近覚えた新技なの〜


あれあれ? お姉さんは部屋を通り過ぎてお兄さんの部屋の方へ。

つまんない。 お邪魔しちゃいけないよね…

………でも、ちょっとだけ様子を見てみよっと!

ラヴァーな雰囲気ならもちろん退散しますよっと!

だってこんなに早く帰って来るし、気になるんだもん…

あたしは隣りの部屋から、お兄さんの部屋の家具の陰に顔だけお邪魔する。

ホラーだな、これは…


「あれ? ななっち、今日は遅いんじゃなかったの?」

お兄さんが驚いている。

「うん!良いことがあってね! 予定を変えて帰って来たの!」

「え〜何だろー?」

「今日例の部長にね、話があるって呼ばれたの。」


何を言われたんだろう、お姉さん。 心配だ。



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