第22話
「お姉さんとお兄さんはどうしてケンカしちゃったの?」
お兄さんが取材に出たある日、あたしはタマちゃんに聞いてみた。
「ケンカっていうより、お互いに相手のことを考えすぎるんだろうね〜」
ええっ? それで、なんで仲違いしちゃうの?
「分からないって顔してるね…要は何処に住むかなんだけどね。」
えっ!?
「…ここに住むんじゃないの?」
「悠くんが前に奥多摩の話をしてたことあったやろ?」
「うん…」
「奥多摩に悠くんが同人誌を一緒に作ってた頃の友達が何人か住んでてね。」
タマちゃんはあたしにミカンを渡しながら話を続ける。
「遊びに行った時、風景と雰囲気に創作意欲がとっても刺激されたんだって。」
「ふ〜ん…」
「それでそこに住むことにして、もう家も準備に入ってたらしくてね。」
話を聞きながら剥いたミカンを、あたしはひとふさ口にする。
その味に、奥多摩もこういう懐かしい雰囲気の所かな〜と想像する。
「だけど七緒ちゃんと付き合いだして、どうしようってなったワケさ。」
「そうか〜」
「七緒ちゃんに仕事も続けてほしい、サヤちゃんのこともある、って悩んでね」
「えっ? あたし?」
「ほら、七緒ちゃん、あんたに約束してただろ? ママを見つけるって…」
それとなんの関係が……?
「分からないかい? 二人で引っ越しちゃったら難しいやろ?」
「あっ、そうか…」
「だから引っ越しはやめようとしたらしいけど、七緒ちゃんがそれに怒ってね。」
「なんでなん?」
「私が原因で、創作の為になる環境をあきらめるなんてダメーって言ってた。」
「難しいんだね…」
タマちゃんはお茶を飲んで一息つき、話を続けた。
「その後、七緒ちゃんが別居婚でも良いんじゃないかと言いだしてね…」
結婚しても離れて暮らすってこと?
「それを悠くんが嫌がって…それで仲違いしちゃったんだよ。」
「…じゃあ。…じゃあ、あたしのせいで一緒に暮らせないの?」
「いやいや、仕事のことが大きいんだよ。やっとやる気になったしさ。」
タマちゃんが気をそらすように言ったけど、本当にそうなのかな〜
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