第19話

お姉さんが伝えた部長さんの話を聞いて、みんなしーんとなってしまった。

よく分からないけど、なんだかあたし悲しくなった。


「…身につまされてしまうね〜」

タマちゃんがため息をついて言う。

「七緒ちゃんに酷い働き方をさせて、嫌な人間だと思っていたけど」

「そうですね。人間っていろいろな思いを抱えているものですね」

「だからって、関わりのないもんに怒りをぶつけて良い訳はないからね」

「本当に。初めて社会に出たななっちが夢をなくすところでした」

タマちゃんもお兄さんも複雑な様子だ。

えっ?ちょっと待って! 何?そのって…

いつの間にそんな呼び方をする仲に?


「それで七緒ちゃんは如何することにしたんだい?」

「私もちょっと悩んでしまって、考える時間をもらったんだけど…」

お姉さんはゆっくり言葉を続ける。

「今までの仕事が基礎としたら、ここからがノウハウを刈り取る時期でしょ?」

「ふむ」

「勿体ないし、そんなに仕事ができる人なら、それを頂こうかと思うんです」

「え〜お姉さんまたいじめられない?」

「うん、さやちゃんのおかげで目が醒めて、付き合い方が分かってきたの」

「ほんと?」

「ほら、このところ帰りもそんなに遅くないでしょ」

「うん、そうだね」

「しんどい所だけ付き合って、成果がないなんて、悔しいじゃない」

お兄さんがそれを聞いてふっと笑った。

「そんな照れ隠しに自己中な言い方して… ななっちはほんと優しいな〜」

「そんなことっ…」

お姉さんは顔を真っ赤にしてしまった。



結局、お姉さんは部署替えはせず、そのまま頑張っている。

部長さんは行き過ぎが無いよう気をつけてくれるそうだ。

気持ちの持ちようのせいか、上司の態度も変わってきたってお姉さんは言う。

このままうまく行くと良いな〜

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