第14話

「お姉さん、タマちゃんが今度絵本のお兄さんと一緒に食事しようって。」

「わーお! なんでそんな話に? 絵本のお兄…??」

「奥の部屋のお兄さん。一青あおと悠っていう絵本作家なの。」

「へ〜 絵本作家さんだったんだ。」

もちろんお兄さんのことは、廊下で挨拶くらいはして顔は知っている。

「あたし本屋さんで、お兄さんの本みたことあったんだよ。」

「え〜そうなんだ。」

その後、お姉さんは斜め上を見上げ、何か考えているような顔をした。


「早く土曜になれ〜」

お姉さん、子供ですか?

お兄さんに早く会ってみたいようだ。

絵本作家が珍しいのかな?


その日はもうすぐハロウィンだったので、ハロウィン仕様にしてみた。

ちぎりパンやクッキーにジャックオーランタン、白いおばけ、コウモリをデコる。

ピラフとサラダも可愛い型抜き野菜をトッピング。

タマちゃん、お姉さんと一緒に食事を仕上げる。


「これはすごいなー! タマちゃん、大変だったでしょう。」

やってきたお兄さんが驚いて言った。

お姉さんは最近やっとタマちゃん呼びするようになったけど、お兄さんは早い。

「なんの。さやちゃんが料理上手だから、ほとんど作ってくれたんよ。」

「すごいなーさやちゃん。」

お兄さんが感心したように言ってくれる。


「音野さん、急に参加してご迷惑かもと思ったのですが…」

音野はお姉さんの苗字です。

「いいえ、そんな。絵本見せていただけると聞いて楽しみにしてました!」

「さあさあ二人とも、とりあえず座って座って!」

タマちゃんがみんなを座らせる。

みんなでいただきますをして、思い思いに食べ始めた。


お兄さんが刊行された絵本数冊と描きかけの原稿も見せてくれた。

「ほら、さやちゃんのスケッチ、ここに使ってるんだ。」

「わ〜さやちゃんにそっくり!」

「うまいもんだね〜」

「えへ、なんかうれしい。」

「今日のハロウィン飯も、なんだか描きたくなっちゃうな〜」


一青あおとさんの絵本はいつ頃から本屋に並ぶようになったんですか?」

お姉さんがお兄さんに聞いた。

「そうだな〜やっと売れだしたのは、2年近く前かな〜」

「やっぱり! さやちゃん、ほら、やっぱり最近だったんだね。」

「…あっ!そおか〜あたし、本屋さんで見たんだもん。最近だね〜」

お姉さんとあたしは二人で納得しているが、お兄さんは意味ぷーになっている。

でも聞くのもなんだしみたいな感じでそのままスルーするようだ。

あたしは本当に最近四年生だったんだね。

ママとパパ、何処かにいるんだよね。会えるかな〜


「そういえば音野さん、どうしてさやちゃんと暮らすようになったんですか?」

「なんでか知らないけど、選ばれたのかな〜」

お兄さんはなんだそれ、という顔になった。

「知らないって…音野さんがお忙しそうなのは分かっているんですが…」

「えっ?」

「気になってたんですよね、幼稚園とか小学校とか。」

「ええっ?」

「服もこう、もうちょっとなんとかならないかと…」

「あ〜私も夏に浴衣着せようとしたけど、すぐにこのキモノに戻っちゃって…」

「はあ?」


あちゃー、お兄さん、あたし座敷童子ですから!

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