第11話

お友達で思い出したけど、あたしはエリちゃんと大の仲良しだったんだよ。

お互いに家に遊びに行って、お泊まりなんかもしたの。

エリちゃんの家も自分の家もどんなだったか思い出せる。

!! 何処にあったの?


記憶はそこで途絶えてしまった。

ちょっと落ち込んだけど、あたしはエリちゃんが思い出せてうれしかった。

それに新しいお友達もできた。


おばあさん改めタマちゃんが梨を切って出してくれた。

「美味しいわ〜 おばあちゃんは買い物とかどーしてるんですか?」

「有難いことにスーパーが個配してくれてね。」

「わーそれは便利やね。」

「この梨とか柴漬けなんかは娘が送ってくれたもんやけど。」

美味しい梨だ! タマちゃんの娘さんに感謝!


「七緒ちゃんは夜遅くに帰って来てるみたいやけど、食事はどうしてるの?」

「いや〜恥ずかしいけど、コンビニ弁当です。」

お姉さんはちょっと舌を出して言った。

「仕事が忙しくて……ブラック企業じゃないけどブラック上司なんですよ。」

「そらしんどいなー」

「ちょっとゾンビみたいになってて…部屋中、物だらけにしちゃってて。」

「おやおや。」

「さやちゃんが散らかしてたのを片付けてくれたんです。」

お姉さんはあたしの方を見て言った。

「さやちゃん、ありがとう。 あれからシャキッとした気分になったのよ。」

「ううん、お姉さんは怖がらないしあたしに優しくて…あたしの方こそだよ。」


「そのブラック上司……そんなに忙しいのに仕事へらしてもらえんの?」

タマちゃんはもっともなことをきく。

「最初は…男性と差別無く働きたいよなー、君も……とか言われて。」

「ふむ、わざと平等の意味をはき違えて、厚かましいやっちゃ。」

「それが今じゃ、同期の男子にも、こんなに忙しい人いないくらいで…」

「それは育てる気やなくて、仕事押し付けて、潰してもいい人材や思てるで。」


タマちゃんはすごい歳なのに、意外と世情に長けているらしい。

タマちゃんとお姉さんの間であたしには良く分からない話が続く。

でも、あたし、分かった。

お姉さんは忙しすぎて、普通の生活ができなくなってたんだ。


…あたし、頑張る! お姉さんちのお手伝いさんになる!

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