第9話 おばあさん

あたしのほうがびっくりして、サンドイッチを持ったまま固まっちゃった。


「こんな歳になって、また座敷童子に会うとはの〜」

おばあさんは笑ってそう言った。

やっぱり、おばあさんもあたしが座敷童子だって思ったんだ。

「……おばあさん、座敷童子に会ったことあるの?」

「子供のころ良く一緒に遊んだもんや。 懐かしいね〜」

いっぱいの皺の中から、キラキラと子供のように無邪気な瞳が見えた。

「もう90年近く昔のことだよ。」

「すご〜い! ずいぶん昔だね〜」

「そやろ? でも私にとったら、ほんの少し前のことなんやよ。」

「ふ〜ん?」

「ちっぽけな田舎やから思うとったけど、こんな都会にもおったんやな。」



外からあわただしい足音が聞こえた。

ピンポーン、、ピンポーン

「開いとるよ!」

おばあさんが大きな声で言った。

「おばあちゃん、お邪魔します!」

部屋の戸が開いて、お姉さんが顔をのぞかせる。

「…さやちゃん! あ〜びっくりした!」

お姉さんは胸を押さえた。


「あ〜あんた、お二階の、、確か七緒ちゃんやったね〜」

おっと、お姉さんって七緒ちゃんって名前だったんだ〜

あたしったら、失礼なことに名前も聞いてなかったよ。

「おばあちゃん、覚えてくれてたんですか?」

「ん〜乙姫さんと同じ名前やろ?字は違うけど。 私、あの子大好きでね〜」

「…乙姫?」

「ま〜それはええから、上がったら?」


お姉さんはそれなら、と、2階に戻ってサンドイッチを取ってきた。

なぜか3人の朝ごはんが始まった。

どういう展開なん、これ。


「おばあちゃん、これ、さやちゃんが作ってくれたんです。おひとつどーぞ。」

「ほーすごいのー、あんた、さやちゃんって言うのかい? おや美味しいね。」

おばあさんは卵サンドを貰った代わりにと、ご飯と柴漬けをだしてくれた。

あたしも柴漬けを一切れ貰った。 これ、あたしの好きなやつだ!

ママがたまに切らして、違うのを出した時は悲しくなるんだよ。


「さやちゃん、どーして急に下の階に落ちちゃったの?」

お姉さんが聞いてきた。

「ん〜なんかねー、出来そうな気がするの。」

あたしは、立ち上がって隣の部屋の方へあるいて行き、壁をすり抜けた。

隣の部屋は何もない空き部屋だった。(ほっ)

あたしはUターンしておばあさんの部屋に戻った。


「おったまげた!」

おばあさんがそう言って、お姉さんと二人で目を丸くした。


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