第7話

次の日、お姉さんがちっとも起きてこなくて、大丈夫かなとあたしは焦った。

あんなに遅く帰って来たのに、あたしのことを親身に心配してくれたんだもの。

眠くて当たり前だよね。


そうだ、お姉さんが起きた時に食べる朝ごはんを作っておこう!


…あっ……あたし、思い出しちゃった。

あたし…お料理上手な小学生だったんだわ〜

小学生お料理コンテストにも出たんだよ!?

いや〜自分で言うのもなんだけど、賞賛の嵐でさ〜


いや…そんなことより今は朝ごはん作らなくっちゃ!

あたしはそっと冷蔵庫に歩いて行き、中を覗いてみる。

…気持ちのいいくらい物が入ってないな!

食パン数枚…スライスハム…スライスチーズ…ピーマン…ブロッコリ少量…

それと扉に卵と牛乳…あとは調味料なんか…はい、終わり。

これは…お姉さん、ピザトーストしてましたね。

…じゃあ、今朝は卵サンドなんてどうでしょう?


片隅にちっちゃいバターが転がってた、おっけ〜い!

あたしは小さな椅子を引っ張ってきてキッチンの足台にした。

卵を溶いて、塩コショウし牛乳を少し混ぜる。

フライパンに弱火でバターを溶かし、熱くなったところに卵を流す。

少し焼けてきたら、お箸で大きくかき混ぜ、ほぼ半熟状になったら出来上がり。

手早くお皿に移し、キッチンペーパーをのせて粗熱をとる。

ラップをのせたら熱が入りすぎるからペーパーがいいんだって。


端を落としたパンにバターを塗り、粗熱のとれた卵のスクランブルをのせる。


もう一枚もバターを塗って上にかぶせる。

バターの他に、少しフレンチマスタードも塗りたいところだけど、ないので我慢。

今度はラップで包み、冷蔵庫に少し置いて落ち着かせる。

紅茶パックを見つけたので、そのあいだにお湯も沸かしておく。


さあ、お姉さんを起こさなくっちゃ!

でないと遅刻だよ。

布団に隠れた頭を覗きこむ。

「お姉さん…」

ちょっと揺らしてみる。

「ん〜んん」お姉さんは伸びをする。

「…さ、さやちゃん!」

お姉さんは急に目が覚めたみたいで、起きあがった。

「お姉さん、早く早く!遅刻遅刻!」

「ん?……今日は土曜だからお休みだよ。」

そう言って、ちょっと恨めしそうにお布団をみた。

「あ〜そうか〜あたし曜日が分かんなかった…」


シュンシュン! あっ、お湯が沸いた。

「お姉さん、卵サンド作ったんだけど、まだ食べない?」

「えっ? さやちゃんが作ってくれたの?」

お姉さんはあたしの手を取って、うれしそうに笑った。

「食べる! さやちゃんが作ったのなら、どんなのでも美味しいと思うよ!」

お姉さん、それは期待してないってことですか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る