第5話

気がついたら部屋の隅に座ってた…


「…はあ〜」

やっぱりだめか、また戻って来ちゃったよ。 思わずため息が出る。

外から大きな足音が響いて、ガチャッと戸が開いた。

中を覗いて、あたしを見つけたお姉さんはひゃ〜〜と叫んだ。


「あんた!…あんた、何なの?………幽霊?」

「え〜〜あたし、幽霊なの?」

「ぶっ…」

あたし、ウケてる?


怖がってたお姉さんは、噴き出した後はなんだか恥ずかしそうに眼を逸らした。

その後、お姉さんはあたしの前にそろっと座った。

「ごめんなさい、お姉さん。あたし、今度こそ…」

あたしは嗚咽を呑み込んだ。

「…お姉さんと一緒なら今度こそ、外に出られるって思ったの。」

「出られないんだ…」 お姉さんはちょっと考え込んだ。


「…あんたは…自分を何だと思ってるの?」


「…えっ?」

そうだ、あたしは考えるのを避けていたんだ。

違う子になって、このアパートから離れられない、あたしは何?


「じゃあ、名前は何ていうの?」

「…?…さや?」 あれ? さやだっけ? 

「さやちゃん、ね。…あんた、いつからここに居たの?」

「昨日の夜かな…何度も外に出ようとしたんだけど。」

「う〜ん……幽霊にしては足もあるし、怨念無さそうだし。」

お姉さん、もう怖くなくなったんですか?

お姉さんは考えこんで、それから言った。

「部屋に居ついてるって…まるで座敷童子みたいやね〜」

そう聞いたとたん、自分は座敷童子なんだって気がした。

「それ!そんな気がする、あたし。」

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