第98話 むかしマンガは文化じゃなかった

 あいかわらずNHKプラスを観ているわたし。


 ドキュメンタリー好きのわたしは、いま「アナザーストーリーズ」を観ているのですが、取り上げられているのが池田理代子さんの『ベルサイユのばら』です。なかでも、唯一無二のキャラクター、オスカルに焦点を当てた構成が見どころ。マンガのキャラを使って、ジェンダー論を説く手法は目新しくもなんともありませんが、むかし読んだことあるので観ちゃいますね。


 読んだことありますか。


 連載がはじまったのが、1972年だそうです。

 学生運動の象徴的な事件(そして、学生運動の敗北の象徴)として有名な「東大安田講堂占拠事件」が1968年。その後の学生運動の成れの果て、革命幻想が大きな汚点として歴史に残る「あさま山荘事件」が1972年。女性のあり方を描いた『ベルサイユのばら』が、フランス革命を舞台にしているのは、日本での革命を夢見た学生運動の影響が非常に強いんですね。


 断っておきますが、わたし、『ベルサイユのばら』には詳しくないです。ただ、主人公オスカルはフランス革命の成功を見ることなく死んでしまうし、もうひとりの主人公マリーアントワネットも、革命運動が過激化するなかで処刑されてしまう……ということくらいは知っています。革命に加担した者は敗れ、革命自体も道を誤っていくという、この国の学生の運動のたどった道をなぞるような物語構造になっているのが興味深いところです。


 NHKが、「100分de名著」で萩尾望都さんを取り上げたり、今回は「アナザーストーリーズ」で池田理代子さんでしょう。わたしが子どもの頃には考えられなかったですね。マンガに描かれていることが「文化論」としてNHKで取り上げられるなんて。しかも、大人向けの漫画ではなくて、子供向けの「少女マンガ」ですからね。


 わたしが熱心にマンガを読み始めたのは、1980年ころからですが、マンガを読んでいる当人も「たかが、マンガだ」とか「マンガなんて読んでちゃだめなのになあ」と後ろめたい感情を抱えながらも、おもしろくてやめられないとマンガを読んでいたものです。『ベルサイユのばら』もそういうマンガのひとつ。40年たって、大真面目に論じられるとは、夢にも思いませんでした。


 あと、20年、30年たったらカクヨムも「文化」になってますよ、きっと(笑)



 ちなみに、男の子だったわたしは、『ベルサイユのばら』をオスカルやマリーアントワネットに感情移入して読めるわけではありませんでした。かといって、アンドレやフェルゼン目線で読めるわけでもありません。あんな男たちいないからね。


 ルイ16世。じっさいの男性にはああいう人が多いです。

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