第77話 なにを思って書いていますか?

『生き残る作家、生き残れない作家 冲方塾・創作講座』(早川書房)


 図書館で借りてきました。創作論って手に取りたくなるんですよね……。


「小説の書き方」的テキストは、いくつもありますが、意外に「売れっ子作家」さんは、そういうの書かない。書けないのか、書かないのか分かりませんがあまりない。


 ――創作のノウハウなんて人それぞれだし、短時間にカルチャーセンターで教えられるものじゃないので、創作指南なんてムリだよ。


 たぶん、こういうふうに考えるんでしょう。


 わたしもそうだと思うし自分では無理だなと思いますが、なかには創作手法を解析して整理して、システム化できる作家さんでいて、そういう人は創作論を書くことができますね。この本を書いてる冲方丁さんは、そういう人。


 00年代、『マルドゥック・スクランブル』でヒットを飛ばした冲方さんは、かなりの理論派でした。いかにもSFを書きそうなタイプ。


 この本の中で、まず冲方さんが書いているのは――


「WHYを知る者は生き残る」

 小説を書くきっかけに「WHY」を据えている作家は書き続けることができる。

 そこに「WHAT」を据えている人は、いずれ書けなくなる。


 なるほどと思いました。

「なんのために小説を書くのか」という目的の中心に「WHY」を据えて書く作家さんは書き続けることができるけど、「WHAT」を据える人――お金のためであったり、小説賞のためであったりする人――はその「WHAT」を手に入れた瞬間から書くのが難しくなる。あらたな「WHAT」を見つけないと書けなくなる。いつまでも「WHAT」を設定し続けることは難しく、いずれ書けなくなる、そうです。


 抽象的で分かりにくいですが、冲方さんは「最初の一行を書くわくわくと、最期の一行を書く達成感を、死ぬまで味わい続けたいから書く」というのが、「WHY」の根本にあるらしいです。いかにも作家らしいですね。わたしは最初の一行わくわくしない、怖いですよいつも(苦笑)。具体的ななにかのために書いてるわけじゃないんですね。また、「執筆を通して、自分、人間、社会、世界を知りたいから書く」という認識もあるそうです。


 目的設定に「WHY」を置くと書き続けることができる――みなさんはどう思いますか?

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