第54話 どうしてBLを読み、書くのか。
先週に引き続き、堀あきこ・守如子 編『BLの教科書』を読んだ感想を書いていこうと思います。今回は、「なぜ、BLは書かれ、そして読まれるのか」をこの本の中から拾い上げてみたいと思います。主に本書の第5章「BLはどうのように議論されてきたのか」から、抜き書きしてたわしのつぶやきと共に書いていきます。
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① 竹宮惠子や木原敏江は、異性間の恋愛では描けなかった対等な関係が描けることを重視して――(P79)
●「少年愛」をマンガに描きはじめた当事者のマンガ家たちには、少年同士(女でない者同士)の恋愛を描くことで、女と男の間でする恋愛に付きもである性差に端を発するノイズをキャンセルすることができる――より純粋な恋愛の形を描くことができる――と考えていたようですね。
女は男に対してこうあるべき、そもそも女とは――という束縛から女を自由にするしくみが少年同士の恋愛で、書き手である女性と読み手である女性もそれら束縛から自由になれた(読んでいる間は)ということなのでしょうか。
② なぜ、女性が男性同士の恋愛小説を好むのかについて、栗原知代は「それは無意識のフェミニズムだ」と述べ、ゲイ小説ばかり読んでいた自分自身の体験を「フィクションの中の女性の登場人物に、感情移入できなかったから」「社会が強制してくる女性像に同化できなかったから」と読み解いている。(P80)
榊原保美は、「JUNE小説」が現実の社会の中に「そぐわない形で存在している自分」にとって「救済」であったと論じる――(P81)
よしながふみは、BLを「今の男女のあり方に無意識的でも居心地の悪さを感じている人が読むもの」としたうえで――(P91)
● 上に書いたことを当事者目線で語るとこういう感じになる。女性がBLを手に取る理由のひとつが、こうした世界との違和感――世の中が求めてくる女性像や男女の在り方は、わたし自身となにか違うぞという感覚――なのでしょうか。その違和感がどこからくるのか、どうすればいいのか、BLの中に答えを探そうとしているのかもしれません。
③ 中野冬海は、この表現(やおい表現)に内包される女性の性欲について考察している。(P82)
中野は、(中略)自らの「快の回路」を解析することを通じて、「男を感じさせたい」「男になって、男を抱きたい」という欲望があることを明らかにしている(P83)
● なるほど。考えたこともありませんでしたが、そうかもしれない。男性は強く「女性を感じさせたい」と願う生き物です。「感じてもらえる=喜んでもらえる」というのは、承認されているとか、歓迎されているとか肯定的な評価に通じます。男性は女性から肯定的な評価を得るために生まれた存在ですからね(笑) 男性と同じような評価を求める女性もいるでしょう。
④ 永久保はBL小説にはロマンティック・ラブ・ストーリーとエロ小説という2つの異なる顔があると述べる。この2つは異なる指向性を持つ。ロマンティック・ラブ・ストーリーの部分では、男性同士という仕掛けによって、男女間には存在してしまうジェンダー的な権力構造を排除し、対等な関係性と理想的なパートナーシップを実現している。他方、エロ小説の部分では、対等性は志向されず、セックスにおける役割が攻と受に見られるジェンダー的要素が男性同士という同質性の上にあることによって、「読者」はジェンダーを「抑圧を排除して……娯楽として楽しむ」ことが可能になったと述べる(P85)
● こういう視点はなかったです。なるほど。ロマンティック・ラブ・ストーリーという部分が、男性向けのエロ小説にはありませんよね。BLとエロ小説を明確に分ける点でしょう。男性向けのエロ小説には、「対等な関係性と理想的なパートナーシップ」なんてないです。いまのカクヨムではラブコメが受けているようですが、ラブコメって徹頭徹尾男性キャラにとって都合のいい女性キャラが出てくるお話が多いです(笑)志が低い、BL以下。
⑤ 紗久楽さわの『百と卍』が文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した。こうした賞をBL作品が受賞するのははじめてのことである。(P72)
● 文化庁お墨付きのBLがあるんですね。しりませんでした。カクヨムのラブコメが芸術選奨を受賞するようなもんですかね。ありそうにないことです。BLすごいなあ。
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半分くらいしか読んでませんが、まだ面白そうなこと書いてありますよ、この本。時間があったら、またエッセイに書こうと思います。ではまた。
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