第39話 図書館のはなし

 県立図書館へいきました。この図書館へはめったに行くことがありません。なぜなら――興味のある本がないから。エンタメ系の本が置いてないのです。(真剣に探せば見つかるのかもしれないけれど、探さなければ見つからないレベル)学術書とか専門書が多い。もともとが市立図書館と隣接する立地であり、エンタメ系などより市民に身近な書籍は市立図書館に収蔵するという方針だったのだろうと思います。おかけで利用者が閑散……。


 静かでいいです。


 わたしが図書館に持っているイメージに近い。

 わたしは子どもの頃、二週間に一度、母親と自転車に乗って図書館に通っていました。テレビをほとんど観ない母の娯楽が本を読むことだったからです。キコキコ自転車を漕いで30分。その図書館は木造の(子ども視点では)立派な建物でした。


 薄暗い室内に並ぶ、おとなの背よりも高い書架、広い閲覧室、冷たくて静かな空気――図書館に入ると「大きな声でしゃべっちゃだめ。注意されるからね」身が引き締まる思いがしました。がさつさとは無縁な「賢い人のやってくるところ」という雰囲気を図書館全体がまとっていました。


 図書館は40年近く前に取り壊され、別の場所に移転してしまいましたが、わたしの思い出の中にはいまも建っています。県立図書館はこの木造だった図書館の雰囲気があります。がさつなエンタメはお断り――みたいな(笑)


 数年前に建てられた市立図書館は、子供を連れたお母さんや、仕事をリタイヤしたおじさんたちで溢れ、いつもにぎやかです。「静かにしましょう」といった雰囲気は微塵もありません。それに対して、県立図書館にはほんと人がいない。静かにしなければならないわけではなく、静かにしていないとその場から浮き上がってしまうので、しずかにせざるを得ない感じです。


 そういう雰囲気は好きです。


 調べ物をしにいったのですが、とてもはかどりました。市立図書館ではいつも満席な閲覧席が、ガラガラだというのがすばらしい。座りたい放題の昼寝し放題じゃないですか!

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