第29話 巨乳の呪縛

 おはようございます。

 4月1日、今日から新年度ですね。ま、きのうまでと大して変わらない(うちの職場は、3月中に異動を済ませている)のですが、ひとつの区切りですからね。新しい気分で書いていこうと思います


 新しい気分ってタイトルの「巨乳」なに? ですよね。


 昨日、KACが終わって久しぶりに清々しい気分で本屋さんにいきました。『ビブリア古書堂の事件手手帖』シリーズの最新作が平積みになっているじゃないですか。「おおっ」と思いまして。


 三上延『ビブリア古書堂の事件手帖Ⅲ ―扉子と虚ろな夢―』(メディアワークス文庫)


 これで『ビブリア』シリーズは10冊目。最初に読んだのは、もう10数年前です。すごい昔ですねえ。びっくりです。内容は、古書にまつわる謎・事件を「ビブリア古書堂」の女主人・栞子さんが解決していく――という人の死なないミステリです。「古書+ミステリ」という視点が新鮮だったのと、古書(本)と古書店にまつわるうんちくが素晴らしく、当時、大ヒットしました。


 わたしも当時読んで、「世の中にはそんな稀覯本があるの? 古書店ってそういう風に経営されてるんだ」と新しい発見だらけで、めちゃくちゃ楽しませてもらいました。いまは、惰性で読んでるんですけど……。(失礼なヤツ)


 『ビブリア』の主人公・栞子さんは、「巨乳」ってふうに描写されてるんですよ。


 でも、『ビブリア』で栞子さんの巨乳がストーリーに絡むことは、ほとんどないんですよ。相棒となる大輔くんとちょっとどきどきさせるくらいの効果しかなく、ほんとに無用の属性なのです。


 ――なんのための巨乳なの?


 シリーズを読み進めるにつれて、どんどん巨乳が意味をなくしていくのでそう思ってました。


 メディアワークス文庫ってレーベルは、当時「ラノベ以上一般文芸未満」の小説が発表されていました。いまもそうですが、ライト文芸は表紙にラノベ的なアニメ絵イラストを採用しますよね。


(この「アニメ絵イラスト」は80年代ラノベの発明です。80年代後半までは本にセルアニメ風のイラストが付くことはなかった。それまでは、アニメはお子様のものであり、大の大人が読む本の表紙にはふさわしくないと思われてました)――脱線した。


『ビブリア』の表紙には、長い黒髪の女性が伏し目がちに本を読んでいるイラストだったのですが、巨乳で繊細、そりゃあキレイのイラストです。わたし当時の『ビブリア』のイラスト大好きなのですが、これですよね。巨乳の理由は。絵にしたとき、男性読者にアピールするんできるんです。


 ライト文芸の宿命じゃないですか、女性の巨乳属性は。

 物語の内容とは関係ないけれど、女主人公は長い黒髪をもった美人で巨乳にしよう、本好きのメガネっ子で極度の人見知りってどうよ――っいうふうに、まずキャラクターありきで小説を書き始めたんじゃないですかね。だって、『ビブリア』は栞子さんのキャラクターで読まれている小説というよりは、「古書にまつわるミステリ」が秀逸だから読まれているシリーズですから。栞子さんがショートカットの貧乳でも読まれたと思います。




『ビブリア』は、物語のなかでも10数年の年月がながれ、最新巻では主人公は栞子さんの娘・扉子に変わりました。(まだ内容読んでませんけど)扉子は、栞子さんとそっくりの美人ですが、表紙イラストを見る限り、巨乳ではないみたいですね(笑)『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズは、10数年の時を経て、やっと「女主人公ヒロインは巨乳であるべし」という呪縛から解放されたようです。

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