第10話 塾 ――目からウロコが落ちた話

 うちの奥さんが、春から息子を塾に通わせるというので、候補となっている塾の説明会に行ってきました。


 塾とか勉強とかいうワードにネガティブな印象しか持っていないわたしは、


 ――えーっ、通わせたくない。

 ――いまやってる公文でいいやろ。


と言いましたが、奥さんは聞く耳を持ちません。息子にとって公文は苦痛以外の何ものでもないらしく、ほとんど進歩がないのも事実。塾の方がいいのかなと、奥さんと息子についていったのです。


 入塾テストというものがあるらしいと知りました(びっくり)。ほとんど不合格になることはないらしいですが、「九九を理解していないようではお断りすることもあります」と塾の先生が言ってました。ほんとうに学習支援が必要な子どもは、学習塾から断られてしまうんだと先生の説明に切なくなりました。


 あと小学校で子どもに求められている学習レベルは、「将来の進路(高校や大学への進学)」を念頭に考えると恐ろしく低いので、まったく油断できません、とも話していました。納得。小学校はこの国に住む人として、このくらいは知っておいてほしいということを習うところですもんね。学校の先生と塾の先生とでは、視線の置き場所がぜんぜん違うんだなあと変に感心しました。


 それからわたしの住む兵庫県の公立高校の入試制度について説明があったのですが、すごくおもしろかった。生まれも育ちも兵庫県ですが、こんな明快に高校入試の説明をしてもらったのは生まれて初めてでした。目からウロコがポロポロ落ちましたよ(笑 中学の先生って、生徒に高校入試の詳細は説明してくれないんよね。


 兵庫県の高校入試が内申重視だというのは昔からそうだと知っていましたが、どうやって決まるかは知りませんでした。それをなぜか塾の先生から教えてもらうとは……。


 中学三年生の通知表の点数(五段階)に一定の数字を乗じて内申点を出すそうです。入試科目にない芸術系科目(保健体育や美術、音楽など)の比重が高く、内申点は合否判定の半分以上を占めます。部活や生徒会活動は一切加味されません。


 どういうことかというと、兵庫県は中学の定期試験の結果(普段の努力)を重視していて、入学試験の一発逆転が効かないということです。それを実際の点数の割り振りを元に解説してくれるので、わかりやすいわかりやすい!


 なるほど中学の先生が進路指導しやすいシステム。思い返せば、わたしも進路指導のとき「◯◯高校なら大丈夫だけど、●●高校は合格しないかもしれない」と言われました。びびりのわたしは◯◯高校を受けましたけどね(笑


 そういうことかあ。


 あと「通知表の『3』という点数は値打ちないですね」と切り捨てられてました。グサッ。わたし英語は3しかとれなかったんです。「学校へ来て普通に授業を受けてれば、相当テストが悪くない限り『3』つきます」。ドキッ。音楽2でしたけど?「『1』は登校してこない子に付ける点数ですから、通知表の最低点は『2』です」


 わたしは最低だったのか〜❗️

 高校入試合格を請け負っている塾の先生の言葉は厳しいです……。


「通知表で『3』をとっていては、受験できる高校を選べません。塾では子どもたちに『4』か『5』、定期試験の上位30パーセント以上の成績を取ってもらうことを目標にしています」


 はーっ、塾はめちゃくちゃ目標が明快です。公文とは違うな。うちの息子がどうなんかはともかく、目標が明確なのは子どもにもわかりやすいでしょう。


「家で親御さんが勉強をみる必要はありません。大きくなるとお子さんと揉めることがあります。親御さんはお子さんの応援に回り、勉強はすべて塾にお任せください」


 た、頼もしい。すごいな塾の先生というのは。




と、めちゃくちゃ感心して塾の説明会から帰ってきました。息子の入塾テストもOKだってので通わせようかと奥さんと話したのですが――みなさん、塾っていきました? どうでしたか?

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