最終問題−2
まるで大賢者。途方も無い脱力感。彼方まで続く虚無感。再会という光が消え、瀬戸際で堪えていた最後の一雫を抗えず放出した。
どこにも力が入らない。立ちあがれない。前を向けない。答えられない。もう、未来を信じることができない。
心が燃え尽き、枯れ果てた。理央との再会だけを糧にここまでやってきたのにそれを失った。それを願うと、我が子を犠牲にしなければならないという。
もう一度会いたかった。何より子供が本当ならこんなに嬉しい事はない。2人で泣いて抱き合って喜びたいところなのに、もう分かち合う事ができないんだ。
他にどんな事でもする。何もいらない。全てを捨てでも会いに行きたい。想像するだけで爆発し止まらなくなる感情。抑えきれず嗚咽する。
ぐちゃぐちゃな表情を見て、あの優しい声と笑顔で慰めてくれないかな。温かい手のひらで俺の背を叩いてくれないかな。
……もう、どれ程の涙を流しただろうか。どれ程想像しただろうか。2人が子を見て微笑む、柔らかで温かな家族の時間。届かない希望を願いを続けて、一体どれだけの時間が経っただろうか。
感情を出し切った頃、俺はようやく立ち上がる事ができた。そして、改めて2人をこの目に映すことができた。
これから先の事。もう、何も考えなくていいんだ。
見えた命の終わり。こんなにもあっけない。
たった1人で逝くんだ。寂しいなぁ。とてつもない孤独感。ほんのちょっとでいいからさ。目を見てよ。手を握ってよ。感触、温もり、香り、全部が恋しい、全部が尊い。
「理央……理央っ!」
何度も名前を呼ぶ。思わず理央に手を伸ばした。差し出してくれたら届く程の距離。どれだけ願いを込めても、秤の上にいる理央は俺に反応してくれる事はなかった。こんなに近くなのに。
「……あぁ、分かってるさ」
この問の本質。求められている回答。問いたいのは……
「覚悟なんだろ?」
親としての、父としての、大人としての。いざという時、命に代えてでも子を守れるか。その覚悟。
だからこそ、問は簡単。あとは、答えるだけ。気の済むまでさよならを言うだけ。覚悟ができたら……
「さよなら……理央。1度でいいから2人の赤ちゃん抱っこしたかったなぁ」
また、枯れ果てたはずの涙が流れる。息が苦しくなる。早くしないと覚悟が揺らぎそうだ。俺はスマホの選択画面の選ばないの上まで指を持ってきた。
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