問6−2
【希望は未来に】
【無償の愛】
【宝物】
【未来は創るもの】
【小さな光】
今までに得たヒントはこう。何が問いたい?
……いや、何となくは分かってる。子供だろ。無償の愛を捧げる存在。それに未来は子供が創っていく。子供は輝く希望、国の宝なんだ。だが、今ここに子供はいない。他にヒントがあるってのか?
考えろ。落ち着け。目を閉じ冷静になったつもりだが、改めてさっぱり分からない。
今回は何だ? どれが正解というより、全部正解なんじゃないか?
マンションの女性。るるちゃんの母親。電車の女性。広場の女性。
……ん?
ヒントは5つ。忘れてた。恥ずかしさのあまり飛び出していたんだった。
俺は最初にいた部屋へと戻った。そこにはスーツ姿の女性。改めて女性を冷静に見てようやく思い出すことが出来た。
「以前、電車で……」
「以前は、席を譲っていただきありがとうございました」
「やっぱり、そうでしたか。いえいえ、当然の事ですから」
「気分が悪かったんですが言えなくて、気付いてもらえた時は本当に嬉しかったんです。ありがとうございました」
「とんでもない……ぁ」
重要な事実を思い出した。そういえば、この女性は妊娠していたはずだ!
「どうかしましたか?」
「俺はあなたを選びたい」
「……付いてきて下さい」
そう言って廊下に出ると女性が目の前の壁に手をかざした。膜の様なものが出現し、そこに入る事が問の回答だと理解する事が出来た。他の女性も集まる。回答の前はいつも震える。
「決心がつけば、中へどうぞ。次が最終審判となります」
大丈夫。これで間違いない。決定的だ。
あとは、決心して進むだけ。もう少しで元に戻る。すべて終わる。ゴールはもうすぐだ。そして、理央に会えるんだ。
会えるんだ……よな?
なぜかザワ付く心臓。何か大切な事を忘れているようなそんな感覚。落ち着け。ゴールが見えるところまできて油断しているんじゃないか?
念の為、進む前にスーツ姿の女性に声をかけた。
「出産の予定日はいつ頃ですか?」
「もう、1年前に赤ちゃん生まれましたよ。ちなみに、この場にいる誰もが現在妊娠はしていません」
えっ? 生まれた? 誰も妊娠していない?
「そうでしたか。良かったですね…」
危なかった。もう少しで死んでいたかもしれない。ここに子供はいないってことは推理が間違ってる。また、1から考えないと。
かといって、道標を失ったようなもんだ。
じゃあ、どうしたらいいんだよ?
何が正解なんっ…だ……あれっ。
【希望は未来に】
ふと、強烈に感じた疑問を思い出した。前の問で感じた感覚。今回の問は女性を選択する事。これってまさか。
今までの問の記憶を巡らせ、また1つの可能性に辿り着いた。
前の問では時が遡っていた……。つまり、未来ってことは単純に逆算して1番最初の問で出会った女性が未来の希望って事なんじゃないか?
この推理に賭ける。
ってことは最初の問。電車の対面にいた清楚な女性と、立っていたスーツの女性って事だよな……ん?
「……2人いるな」
そうか。変な固定観念に惑わされた。選択するのは必ずしも一人とは限らないんだ。俺は最初の問で出会ったもう一人の対面にいた女性を見た。すると、目があった彼女は優しく微笑み近づいてくる。
「ふふ。やっぱり私が気になる?」
「いや、あの…」
相変わらずの小悪魔的な振る舞いにペースが乱される。思考できなくなる。清楚な見た目なのに妖艶な表情で色気を漂わせている。俺の後ろからハグするように手を回し背伸びして耳元に囁いてきた。
「私達2人でしてあげよっか?」
「いや、あの。君も含めた二人を問の回答として選びたいんだ」
「つまんないの」
不満そうな表情を浮かべながら、すでに出来上がった膜に彼女が手を添えた。すると、膜の周りが虹のように七色に輝き始めた。
その神々しさはまるで問に正解し、生還を祝福されたような気分になった。
少しでも何かに縋りたかった。
少しでも誰かに頼りたかった。
常に付き纏う死への恐怖を一瞬でも早く忘れたくて、無条件に膜へ手を伸ばしていた。指先が膜に触れようとしたその時、ゆらゆらと揺れる膜に理央の顔が映ったような気がした。
会いたいよ、理央。この先へ行けばもう一度会えるんだよね?
指先が震える。呼吸が乱れる。溢れる想いで胸が苦しくなる。
目を閉じ、2人の未来を想像する。
あともう少し。
あともう少しで運命が決まりそうだったその時、俺の中に圧倒的な違和感が生まれた。
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