問6
目が覚めて飛び起きた。寝てたのか? 意識を失ってたのか? ともかく起きた。まだ、生きてる。それを認識することが出来た。
慌てて両手、両腕を見た。顔を体を触れて回った。大丈夫だった。ケガはしていない。最後はあの化け物に覆われたが食べられたわけではなさそうだ。
どうやらベッドの上。なぜかワンルームの部屋のような場所にいる。玄関からベランダの扉までは一直線。シンプルな空間。
「あっ」
そのベランダの扉の前にスーツ姿の女性がいる事に気付いた。ずっと見られていたかと思うと、1人で慌ててたの何か恥ずかしいな。その女性の横には文字が帯となり浮いている。
【希望は未来に】
女性は黙ったままだった。2人きりの空間は少し気まずかった。
そういえば、このスーツ姿の女性どこかで見たことがあるような……。ただ、思い出せなかった。現状を把握する為にも、恥ずかしさから逃れる為にも、俺は玄関から部屋の外に出てみることにした。
部屋の外へ出ると女性がいきなり抱きついてきた。この女性は確か、マンションにいて妻と名乗っていた人だな。相変わらず距離が近い。
しかも服装が、女性のサイズにしては大きいシャツを羽織ってるだけ。ダイレクトに伝わる柔らかみと温もりはすぐにドキドキさせられ触れた部分は熱を帯びる。
「良かった。心配したんだよ」
「ありがとう。ただ、ちょっと離れて?」
扉を開くとすぐ前は行き止まりだった。その代わり1人の女性と帯。左右に道が伸びている。どこかの廊下のような場所。まるで安価なホテルの部屋の前。殺風景な空間。一体この先はどこに続いてる?
【無償の愛】
「ねぇ、私を選んでくれるよね?」
「待って。これが今回の問だとしても、簡単には決められない。考えるよ」
「ふふ。待ってるね」
そう、言って女性から離れて右の道へ進むことにした。
「はぁ……」
いつもそうだ。説明がない。突然過ぎるんだよ。まぁ、愚痴っても死ぬだけだ。もう一度、理央に会う。そう心に決めた。目の前の事に集中するんだ。
先ほどの女性を背に廊下を進む。廊下は真っ直ぐではなくカーブしていた。緩やかに右に曲がっている。
「誰かいるな」
少し進むとまた人がいる事に気付いた。何より今は情報が欲しい。あれは誰だ? どこかで見た落ち着いた大人の女性。確かあの人は……
「あなたは…。以前は、娘を助けていただいて、ありがとうございました」
るるちゃんの母親だな。るるちゃんを迎えに来た時と同じだ。前の問の時とは感じが違う。
「いえいえ、とんでもない。当たり前の事をしただけです」
そして、また帯。
【宝物】
「選択される際は、また声をかけて下さいね」
「分かりました。ありがとうございます」
少し言葉を交わし、また、女性を背に歩いた。ずっと右への緩やかなカーブ。ただ、ひたすらの一本道。しばらく歩くとまた1人の女性がいる事に気がつく。
「あっ」
思わず声が出た。話した事なんてない。ただ、この問が始まって最初に見た人。清楚な雰囲気。服装。何となく覚えていたし、何か勝手に気まずかった。
しばらくして、目が合う。沈黙。ちらっと帯を確認する。
【未来は創るもの】
どういう意味なのかさっぱり分からないが、ヒントは得た。気まずさから逃げるように進もうとした時、突然声をかけられた。
「ねぇ」
「えっ?」
思いもよらないタイミング。なぜかドキドキした。すると彼女は自身のスカートを上に引っ張り、白い太ももを見せつけながら俺の目を真っ直ぐに見て呟く。
「私の……見たいんでしょ?」
「ごめんなさい。許して下さい」
「ふふ」
彼女を見ると小悪魔のようにイタズラな笑みを浮かべていた。慌てふためく俺を見て楽しんでいるようだった。
「すみません。失礼します」
彼女から逃げるように真っ直ぐに進んでいくとまた1人の女性。そして、帯。
「あなた、生き残ったのね」
「あぁ、何とかな」
【小さな光】
「ねぇ」
「何だ?」
まるで恋人にせがむ様に甘えた表情で彼女は見つめる。この女性は広場で俺にヒントの代わりにキスをした人だ。
「もう1回キスして?」
「ダメに決まってるだろ」
「ケチ」
俺はまた彼女を背に廊下進んでいった。ずっと道なり。緩やかなカーブ。そして、その道の行き着く先にはシャツだけを羽織った女性がいた。なるほど、ぐるっと回ってきたわけだ。
「おかえり。やっぱり私にする?」
「ごめん。少し考えさせて」
俺は今あるヒントを元に思考し始めた。
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