問5−4
それでも何とかあと一歩のところで保っていられるのは理央の存在だった。その唯一を心の支えに残り僅かな体力と精神力を燃やしていく。
『瑠璃色の地球。尊く輝く小さな光。星空のように数多ある煌めき。大事な始まりの場所。ゆっくりゆっくり少しずつ。溢れる程の愛を受けて。その場所が終わる時もまた大切。そして、また新たな世界が始まる』
間違ってない…。間違ってないだろっ!
これはきっと胎児の事を言ってる。でも、違っていた。なぜだ……?
星空のように……
………あ。
数多ある煌めき? 数多?
人の妊娠でこの言葉は違和感がある。これが原因なのか。これは何なんだ? 何を意味する?
まるで走馬灯のように記憶が駆け巡る。生きる為のヒントがどこかにあるはずだ。どこかに。
『生まれ変わるのを待っている何万もの我が子がこの中にいる』
くそっ……そうだった。思い出した。
すぐ目の前にあった答えに今頃気付くなんて。震える程の悔しさが全身を駆け巡った後、心が痛いほど締め付けられた。
頼れる人はもういない。すでに満身創痍だった。
俺は感情の持たないプログラミングされた機械のようにただ目的地に向かってひたすら進んだ。
もう他に選択肢はない。最後の俺の回答をぶつけるだけだ。
目的地に到着した。佇む1人の女性。そこは今の問がスタートした円形の広場だった。
広場の中心に2人。お互いに視線を交わらせる。まるで恋人同士のようなシルエット。
「会いたかったよ」
「何だ? これから愛の告白か?」
俺は怒りを堪え、テティスの皮肉を無視して回答した。
「見つけたよ……子供、達。そこだろ?」
テティスのお腹を指差して言った。言葉もなく、ただ黙って見つめるだけ。無言の威圧感。
すると、妙な気配を感じ上を見ると大口を開けたそれが俺の頭上にいつの間にか出現していた。まじかよ。これでも不正解か?
「もう、どんな結果でも後悔はない」
ゆっくりとそれが下りてくるのが分かった。視界が奪われる直前、テティスは確かに声を発していた。
「正解だ」
全身を覆い尽くすほどの後悔と、ほんの僅かな安堵を感じながら俺は意識を失った。
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