問5

 俺と秋風はテティスがいた広場へと到着した。


「ここ……だよな?」


「ああ。そう言ってたが、誰もいない。いつの間にかスマホに表示されていたタイムリミットも消えてる。次は何だ?」


 辺りを見ても何もおかしなところはなさそうだ。肝心のテティスも見当たらないが、中央にいた秋風が何かを見つけたようだ。


「おい。何かあるぞ」


 真ん中の柱に貼り紙がされているようだ。近づくと問を示す空間に浮かぶ帯も表示されていた。


 2人で内容を確認する。帯には問が、貼り紙には謎の文章が書かれている。




■問5

【どこにいる?】


『瑠璃色の地球。尊く輝く小さな光。星空のように数多ある煌めき。大事な始まりの場所。ゆっくりゆっくり少しずつ。溢れる程の愛を受けて。その場所が終わる時もまた大切。そして、また新たな世界が始まる』




 2人で顔を見合わせた。


「さっぱりわかんねぇ。暗号かよ」


「そもそも、主語がないしな。それを考えろってことか」


 考えている様子の秋風は何か閃いた様子で呟いた。


「あ、さっきの問と繋がってるんじゃないか?」


「さっきのって……」


 頭に浮かぶ問、親の資格。その答えだった子供。つまり……


「子供がどこにいるかって問なんじゃないか?」


「なるほど。ただそれでも、何か漠然としてるよな。子供なら誰でもいいってことか?」


「だとしたら簡単すぎる。そこで暗号なんじゃないか?」


「重要なヒントの気がするし、撮っていつでも見れるように残しとこう。とりあえずこのままじゃ埒が明かない。子供を探しに行くか」


 広場を出ようとした時、テティスが入れ違いで広場に入って来ている事に気付いた。その時、そっと呟くように言葉を残した。


「早いもの勝ちよ」


「見つけたらいいんだろ?」


「正解すればこの問は終了。最後の審判までもう少しよ」


 最後の審判……。終わりと受け取る事のできる言葉に希望を感じる。横にいる秋風を見た。強い決意を感じる表情、目だった。


「もうすぐだな」


「あぁ、何としてもここを乗り切るぞ。急ごう」


 俺達は広場を後にした。


 目的地もなくただ歩いていた。ただひたすらに視線を散らしながら会話をしていた。


「なぁ、瑠璃色って知ってるか?」


「知らねぇけど、青っぽい色って事だろ?」


「へぇ、初めて聞く色なのによく想像つくよな」


「文章に瑠璃色の地球ってあるんだし、地球に関連するなら青だって普通思うだろ。今までの引っ掛けの問は分かったのにこんな簡単なので悩むか?」


「うるせぇな。ほっとけよ」


 広場を出てからしばらくは、がむしゃらに歩き続けた。そして、うっすらと感じる違和感をようやく秋風が先に口にした。


「さっきからたくさん人とすれ違ってるが、こんなに子供っていないもんか?」


「明らかに不自然だな。お前広場の周り見たんだろ? 学校とか子供のいそうな場所無かったか?」


「そういや、見たな。こっちだ」


 秋風の後に付いていくと学校があった。しかし、そこには人の姿は無かった。休みの日なのか、この意識調査のせいなのかは分からないが、子供を見つける事ができなかった。


「いよいよ、ヤバくなってきたな」


「やっぱりこの調査のせいだろ。ヒントはおそらく暗号文だ、ピンポイントで答えを見つけろってことだな」


「決まりだな。よし、もう一度推理しよう」


 スマホを取り出し、撮った写真を見る。


『瑠璃色の地球。尊く輝く小さな光。星空のように数多ある煌めき。大事な始まりの場所。ゆっくりゆっくり少しずつ。溢れる程の愛を受けて。その場所が終わる時もまた大切。そして、また新たな世界が始まる』


「改めてわかんねぇな。始まりも大切、終わりも大切か……? なぞなぞかよこれ」


「なぞなぞでも解けなきゃ終わりだぞ。本気で考えないと」


 しばらく考え込む無言の時間が続く。早いもの勝ちとは言ってるが誤答はおそらく死。決して焦ってはいけない。目を閉じ思考をクリアに。深呼吸をした。




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