第7話 社会見学!?俺、混乱の一日の幕開け


それは新が学校の日だった。

「気になる。気になるわ!新は一体学校で何をしてるのかしら...」


マリアは新の部屋でひとりでに呟いた。部屋の中をグルグルと何周もしていた。

今は、新が家を出た、朝のことだ。


「よし!こっそり学校に行くわよ!」

痺れを切らしたマリアはそう言うと、パチンと指を鳴らし黒猫に変身した。

―新、待ってなさい!


こうして新の匂いをたどり、マリアは家を飛び出していったのであった。


―――


「授業終わり、各自昼休憩に入るように!」

キーンコーンカーンコーン

担任の言葉で皆姿勢を崩す、

「だりかったー。」「やっとお昼だあ。」などの声が教室内では上がっていた。


「ねえ、新くん、新くんはこの中で何がいちばんオシャレに見えると思う?」


授業終わり、弁当を出して食べていると、隣の佐伯さんに話しかけられた。佐伯さんは、最近のファッション雑誌をこちらに向けてきた。


「おー、これなんかいいんじゃないか!」

俺はファッションには詳しくないながらも、1番いいと思うものを選んだ。

―佐伯さんが着ればなんでも可愛いけど。


「なるほど!新君はこれが好きなのね?」

それを見た佐伯さんはうーんと頭を悩ませているようだった。


―く、もっとファッションの知識を勉強しておけばよかったか?結愛ならこういうの詳しいんだが。

俺は半ばそう思いながら、今度勉強しておこうと内心思った。


―ん?そういえばさっきからずっと視線が?

なんだか、後ろから視線を感じていた。

振り向くと、クラスメイトの巫(かんなぎ)がじっとこちらを見ている。


―な、なんだ?なんかあったか?

俺は珍しいことが起こってドギマギした。巫がこちらを見てくることなどほとんど起こることは無い。


カア、カア、となんだか外のカラスも騒がしい。俺はふと窓の方を見た、すると―


―い、いる。


そこには窓の外で宙に浮きながらこちらを見ているマリアの姿があった。

俺はかなり驚いた。ここは2階だ。窓から人が覗いてくる事などありえない。


俺はマリアの様子をみた。マリアは心なしかなんだか、泣きそう?になっているような気がした。

―学校に来ることなんてなかったのに...。


俺は動揺しながらも1つ咳払いし、見なかったことにした。

なんせマリアは他の人には、人間に変身しない限り見えないのだ。

ここで、不用意に話しかけてしまえば俺は変人扱いされてしまうだろう。


「ねえ、新くん、よかったら今度来て欲しいところがあるの。」

佐伯さんは、俺に向かってそう言った。


―来て欲しいところ?どこだろ?

俺は佐伯さんの誘いにワクワクしていた。

そして、そんな場合じゃなかったと窓の外を見るとマリアは居なくなっていた。



―――

それからあっという間に放課後になり、俺は帰り支度をしていた。


「本庄くん!じゃあ、また明日ね!」

佐伯さんはそう言って、いつものように足早に帰ってしまった。

俺は佐伯さんからの誘いを胸に、ワクワクした気持ちを隠しきれずに返事をした。


「また明日!」

そうして、俺はこのことに胸がいっぱいで、昼休憩の頃のことを忘れていた。


―なんだ?なんだか、俺忘れているような?

何を忘れてしまったのか思い出せずに、荷物を持って教室から出て、廊下を歩いていた。

すると―


―おわ!

前からなにかが飛び出してきた。その正体はどうやら黒猫のようだった。

―く、黒猫?学校に?迷い込んだのか?

新は驚いて、その黒猫を見た。


"新"

なんと黒猫が語りかけてくる。


―ん!?これは、もしかして...マリア?

新は、この語りかけてくる感じをマリアだと覚えていた。


「どうして、学校に来たんだよ?驚いただろ?」

新は、黒猫になったマリアにそう問いかけた。実際、窓にマリアが見えていた時はかなり驚いた。現に教室は2階だったのだ。


"新が学校に行ってる間どうしてるか知りたかった"

黒猫のマリアはそう答える。


「あのなあ、それでもあんなの驚くし、て...」


"新が取られちゃうかと思った"

そう言うと黒猫のマリアはポロポロと泣き出した。

どうやら、マリアは猫になると気持ちに嘘がつけず、素直になってしまうらしい。

いつもの跳ねっ返りの素振りが全く見えない。


「取られる?て、佐伯さんと話してた時のことか?」

新は、マリアが泣きそうになりながらこっちを見ていたのを思い出した。


「全く、とにかく帰るぞ。」

とりあえず、俺はやれやれと思いつつ黒猫のマリアを抱えて帰ることにした。

そういえば、なんだかこの黒猫に見覚えがある気がした。


―そうだ、もしかして...

新は、1年前の通学中での出来事を思い出した。

新が学校に行くために道を歩いていると、急に反対から猫が飛び出してきた。


そこに、突然車が通りかかり、轢かれそうになっていた所を何とか新が救出した。


「こんな所を飛び出してきちゃダメだぞ。気をつけろよ。」

新はそう一声かけて、猫を安全な場所に逃がしてあげた。

猫はそれからしばらく新の方をじっと見ていた。


―そうか、その時の黒猫はマリアだったのか?!


新は思い出した。

―そうか、あの時から俺はマリアに会っていたんだ。

初めて出会ったわけではなかったんだな。


これが運命?というやつなのだろうか。いやいや、俺には佐伯さんがいると新は頭を降って考え直した。


でも、最近なんだろうか、マリアに微笑ましい気持ちが湧いてくる。最初の頃との印象が少しずつ変わり始めていた。


これから俺にはどんな未来が待ち受けているのだろうか。地球滅亡まであと94日。


果たして巫(かんなぎ)の正体とはなんなのか。


これからどうすればいいのか。


俺は色んな考えが渦巻きながらも、帰路についたのだった。


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