第3話 マリアは恋が知りたい...らしい
「さあ、私にキスしなさい。」
「はあ?」
唐突な言葉に俺は白目をむきそうになった。
一体何でこうなった!?
―――
ヴァンパイアの少女が俺の部屋に押しかけてからはや3日が立とうとしていた。
「はあ...」
今日も俺は学校でため息をつく。
何せあれから、これを持ってこい、あれを持ってこいとヴァンパイア少女にパシリに走り回され、俺は疲弊していた。
―ちくしょう、俺の平和な生活はどこに行ったんだよ!?
俺は内心叫び出したかった。
こうしている間にジリジリとタイムリミットが減っている。
なんでもいい、とにかく誰かと話したかった。
がしかし、これといって現在深く絡む相手もいない。
俺はパッと見平凡、誰ともそつなくをこなし、特に深い関わりを持っている相手はいない。帰宅部ということもあり、部活つながりの人間はいないし。
だがクラスメイトの男子とは仲良くに徹し、まあ、周りから邪険にされない程度に人付きあいは出来ているつもり、だ。
もしかしたらぼっちに見えると言っても間違いではないだろうが、別に俺にも友達、いや昔ながらの幼なじみというべきか親しい奴はいる。同じクラスだが、そいつは大手製薬会社の分家の人間だ。
つまりは超金持ちだ。
海外を忙しく飛び回っているらしく、学校では留学扱いになっており、あいつとは久しく会っていない。
―まあ、あいつの性格に比べれば俺はマシな方に見えると思うが。
そんなことを思いつつ、授業を受けているとあっという間にホームルームになっていた。
「起立、礼、解散!」
今日の日直が号令をかけ、みんな足早に帰っていく。
「本庄、またなー!」
何人かのクラスメイトが、俺に挨拶した。
「おう、気をつけてな!」
俺もそれに気さくに返事をする。
そして、次に俺は教室内に視線を泳がせた。
―佐伯さんがいないな。
今日は隣の席の佐伯さんはおらず足早に帰ってしまったようだ。
―いつも放課後なんかに声をかけてくれるのに...。
俺はものすごく残念な気持ちになった。なんせ、訳の分からないヴァンパイア少女にこき使われる日々の中で、佐伯さんの存在は俺にとってのオアシスそのものだった。まるで神様からの恵みのようだ。いや佐伯さんそのものが女神というべきか。それぐらい俺のなかでの佐伯さんの好感度はあがっていた。
そして俺はまた、教室内で巫をさがした。この事態を終わりに出来るかもしれない人物だ。しかし、巫の姿もここにはない。どうやら帰ってまったようだ。
―そういえば、巫とはまともに話したことがないな。なんというか印象がないというか、存在感がないというか、煙のように消えてしまう子だな。
そんなことを考えながら帰り支度をしていると無情にも俺の脳内に声が響いてきた。
―早くかえってきなさい!いますぐよ!
―――
「さあ、私にキスしなさい!」
こうして今に至る。
「はあ?」
俺は帰ってくるなり、自分の部屋で待っていた事態に、素っ頓狂な声を上げた。こういう反応しか出来なかった。
―帰ってきていきなりそれか、なにかの冗談か?
「それにお前その髪型、ツインテール?て、まさか...」
「お前?、マリア、て呼びなさい!これが人間の間で流行っているファッションなんでしょう!そこの書物で勉強したわ!これくらいはできて、当然よ!」
―俺の漫画を...
どうやら、置いていた漫画のツインテールの女の子のキャラをまねているらしい。
この調子じゃキスて言うのも漫画の入れ知恵か?
「マリアていうのはこの地球では聖母の名前なんでしょう!フン、私が目指すにピッタリの名前だわ!」
―どこが聖母だと?
ひとまず少女、いやマリアは、ドヤ顔で言い放っていた。
「あのなあ、キスなんてのは好きなもの同士でやることなんだ。俺とその、マリア?は会って3日、そんな者同士がそんなことをするわけないだろう!?ていうか、まだ身知らずの人間とキスなんて嫌じゃないのかよ!?」
俺は思っていることをぶちまけた。そもそも、なぜ急にそんなことを言い出したのか俺には全く理解できない。
「へえ...人間、てそういうものなのね、知らなかったわ。」
マリアはそう呟いて視線を逸らした。ブツブツ言いながら考え事をしているらしい。
「そうだよ。そもそもヴァンパイアてなんなんだ。一体何者なんだよ。」
俺は、初日からの疑問を口にした。色々とパシリにはつかれわれたが、そもそもマリア?が何なのかさっぱり分っていない。
「そういえば、説明してなかったわね。」
マリアは、どうやら今気づいたと言わんばかりに話し出した。
「私たちヴァンパイアは、この地球から遠い宇宙の別の星からきた、生命体よ。
私たちは元々魔力を持っていて、動物の血を吸うことで、魔力や生命力を蓄えその力で自分の能力を引き起こしたり、子孫を繁栄させていたわ。
だけど、時と共に魔力の力は衰え同朋たちは次々といなくなっていったの。
そしてわかったの、遠い銀河に人間という見た目の近しい生命体がいて、人間の血を吸うことで魔力をとりもどせることが。
でも、血は吸うだけではダメで、好きという気持ちが必要だと言うことよ!」
―なん...だと
つまりエイリアンてことかよ。
確かに血を吸うというのはヴァンパイアの特徴だ。違う惑星から来た生命体だと言うのもうなずける、マリアは銀髪の髪に、深紅の瞳をしており、その姿は大変神秘的だ。悪魔のような羽が生えているが人間と異なったその姿は美しい。
ことさらに、俺の漫画を模したツインテールが目立つが。
マリアは続けた。
「私たち種族は、繁栄のために人間のような好きという感情がなくても種族をのこす生き物なのよ。
好きというのは、恋すると言うことだと聞いたわ!
さあ、私に恋をしなさい!
私を満足させれば地球の滅亡を止めてあげるわ。恋ていうのは女の子を満足させることなんでしょう?
べ、別に恋が知りたいなんて思っていたわけじゃないんだからね!」
俺はワナワナと震えた。いきなり押しかけてきた上に恋を教えろだと?
地球外生命体?魔力?子孫繁栄のため?
俺だって青春したいて思ってるさ、佐伯さんと、な!
「誰がそんなもん教えるかー!」
俺の声は家中に響き渡ったのであった。
どうやらこの、ヴァンパイア恋を知らないらしい?
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