第2話 嘘だろ!?同居!?
い、いや待てよ、これはなんかの冗談じゃないか?なにかのドッキリで、この少女に生えてるのは所謂コスプレ、でやつで...
俺は現実逃避した。頭が追いつかなかったのだ。
「まーだ信じてないみたいね、ほら。」
そう言ってヴァンパイアの少女は、手から紅蓮の炎をだした。
燃えたぎるような真っ赤な炎だ。
その炎が俺の机を掠めた。机の角には焼け焦げた跡が残った。
「ふう、これでも大分力は弱まっているのよ、知ってる?ヴァンパイアて、好きな人の血を吸うことでしか力を得られない、て」
少女は得意げに話していた。
俺は信じざるを得なかった。
―たしかに炎だ。炎は手から出てきたし、手品でもなんでもない。なにより偽物ではない証拠に俺の机が焦げてる。
そして俺は大事な所を聞き逃していた。
「ほんとにヴァンパイアだ、ていうのか。」
俺は驚愕した、そんな物がこの世界に存在するとか知らなかったし、こんなことができるなど到底思いもしないだろう。
少女はそんな俺などつゆ無視して話を続ける。
「あの子は、星降らしの一族の末裔よ。一族の伝承で星を降らすことが出来るわ。現代まで静かだったくせに...今頃なんでかしら。」
少女は不思議そうに口をとがらせた。
「ちょ、ちょっと待てよ、巫のことか?頭が全然追いつかないんだが、星降らしの一族?伝承?なんなんだ。」
俺はとても混乱していた、何せ起こりっこないことが起こっているのだ。
落ち着いてはいられない、正直に取り乱していた。
「とにかく、あんたは私のご機嫌を取りなさい!いい?
あたし今日からここに住むから!」
「は...?」
―――
意味がわからない...正直俺は困っていた。
何せいきなり、常識の範囲を超えたヴァンパイア?の少女が家に転がり込んできたのだから。さらに困ったのは昨日のことだ。
「お、おい、そんなの困る!いいから家から出てってくれ!」
俺は少女の腕を掴んで、階段を降りた。
「もー、乱暴ね!そんなに引っ張って!」
少女は腹を立てていたがそんなの無視した。とにかく、一刻も早くこの少女を外に出し、この非現実な状況からおさらばしたかった。
がしかし、
「新!早くお風呂入んなさい!」
母さんが声をかけてきた。
「母さん、今それどころじゃないんだよ、勝手に女の子が俺の部屋にいて...ほらこに!」
俺は握っていた腕を、前に突き出し少女を母さんの目の前に引き出した。が、
「新?何言ってるの?誰もいないじゃない?」
母さんは俺が何を言っているのか分からないというふうな顔をしていた。
「な、母さん。」
俺は言葉が出なかった。
「とにかくお風呂にはいりなさい!ね!そうしなさい。」
母さんはそうまくしたてた。
―見えてない!?
俺はその後、とにかく少女を外に出そうとしたが、母さんが邪魔して叶わなかった。
とにかく俺は母さんの横を通り抜けようとしたのだが...
「お兄ちゃん、お風呂まだなの?結愛待ってるんだからね!」
今度は妹の結愛がリビングから廊下にでてきた。俺が玄関に行くのを阻止するタイミングだった。
―なんだなんだ、寄ってたかって俺が外に出られないようにしている?
ま、まさか無意識のうちに洗脳しているのか?
「分かった?いいから私を部屋に戻しなさい。話はそれからよ。」
――
そして学校の昼休みである今に至る。
「はあ」
俺はため息をついた。ヴァンパイアの少女はまだ家にいるが、俺には交換条件が出されていた。
―とにかく少女の機嫌をとること
「新くん、元気ないね?どうしたの?私でよければ話聞こうか?」
隣の席の佐伯さんが話しかけてきた。
くう、なんて幸せなんだろう。気になっている佐伯さんからの言葉に俺はめちゃくちゃ元気になった。もし、押しかけてきたのが佐伯さんであれば俺はどんなに嬉しかったか。
「いや、なんでもないよ、俺は大丈夫だから。」
しかし俺は、話したい気持ちをグッとこらえて、そう答えた。
そう交換条件のひとつに、ヴァンパイアのことを人に話してはいけないという条件が持ち出されたからだ。
くそう、なんでこんなことに。俺は佐伯さんとの学園生活を楽しみたいだけなのに...
嘘かほんとか分からない話に乗せられて俺の生活はどうなるんだよ!
ふと、俺の視界に巫が映った。
―は、そうだ!巫、巫だ!たしか止められるのは巫だけだって、あの少女も追い出せるかもしれねえ!
「なあ、巫、ちょっといいか?」
俺は巫に声をかけた。
「なんですか?本庄くん。」
巫はクラスメイトにも基本敬語の奴だった。物静かで、周りに心を開いているのか、開いていないのかわからない、そういう存在だった。
「星降らしの儀式てしってるよな?」
俺は間髪入れずに聞いた。
「知りません。」
速攻で答えが返ってきた。
「あ、ああ、そうか。」
俺は押し黙った。巫が知らないと言うなら俺にはどうしようも無い。
「聞きたいことはそれだけですか?」
巫は、すごく冷静だった。何を考えているのか分からないかくらい透明な瞳で俺を見てきた。
「う、うん、なんかごめんな。」
俺はそれ以上何も言えなかった。
そうこうするうちに、放課後になってしまった。今日も先生の手伝いをしつつ、家であったことは夢であって欲しいと祈った。
「遅かったじゃない!ほんとに星の衝突を止めて欲しいて気あるの?」
全て終わり部屋に帰ると少女が中を浮きながら足を組んでいた。
「なあ、なんで俺がタピオカの有名店なんかで飲み物買わなきゃいけないんだよ!」
そう、先生の手伝いも終わり帰ろうとしたその時、脳内から勝手に声が聞こえてきたのだ。
―いーい?有名店の○○タピオカで飲み物を買ってきなさい!
―なんだと、コイツ俺の脳内に直接声をかけてきやがった。
俺は、逆らおうとしたが、帰り道が行く先、行く先、交通渋滞、工事中などになり、まるで誘導されるようにタピオカ屋にたどり着いていた。
帰りたかったが、帰れないことを悟った俺は仕方なく有名タピオカ店でドリンクを頼んだというわけだ。
「ふざけんな、俺はパシリか!」
俺はキレた、こんなことを毎日されたのではたまらない。
「フン!いいじゃないの!もっと人間のことを知りたいだなんて思ってないんだからね!」
ジュルジュルとタピオカドリンクを吸いながら少女はそう言い放った。
「どうやったらでていくんだよ!」
俺は半ばキレながらそう言った。なんなんだこの状況は一体。俺が何した、てんだ。
「それが人に物を尋ねる態度?」
少女がじっとみつめてきた。
「どうやったら出ていってくれますか?」
俺は敬語で聞き直した。ちゃんとした言葉遣いというからには敬語で喋ればいいんだろうと、やけになって話した。
「私を満足させて、星の衝突を止められたら出ていくわ」
少女のドリンクがズーッと音を立てる。全て飲み終わってしまったのだろう。
「くそ、わかったよ、さっさと満足させてやるさ!」
こうして俺の意地というか、ヴァンパイアとの同居が始まったのだった。
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