俺とヴァンパイア ~地球滅亡は俺次第!?

@suiseiyarou

第1話 俺、ヴァンパイアの少女に出会う

「いーけど、地球滅ぶわよ?」


なんてことだ、俺は今選択を迫られていた。

一人の少女によって...


―――


「今日の授業は終わり!みんな気をつけて帰れよ!」

担任の言葉と共にみんな席をたち、バラバラと教室を出ていく。

俺を残して。


「新くん、今日も残ってるの?」

ふと、隣の席の黒髪ロングの少女に声をかけられた。


「佐伯さんもまだ居たのか。」

俺は本庄 新(ほんじょう あらた)。

高校2年生のどこにでもいるような男子だ。(多分)。

声をかけてきたのは佐伯 咲(さえき さき)、学校でも良く美人だとささやかれる、同級生の女の子だ。

実は、最近よく声をかけてくる、佐伯さんの事が少し気になっている。


「まーた、魚の餌やり任されたんだ!先生も本庄くんが頼みやすいから、て!」

佐伯さんはすこし、怒ったように言う。感情表現のハッキリした、活発な子だ。


「まあ、いいんだよ、花の水やりも任されてるしな。」

俺は先生からは帰宅部ということもあり物を頼みやすいらしく、今日も色々雑用を任されていた。


「あ、時間だ!帰らなきゃ。本庄くんもほどほどにして帰りなね!」

そういうと、佐伯さんは急いで教室を出ていった。

そして取り残された俺は、1つ息を吐いた。


「あー、佐伯さんみたいな子と付き合いたい。」

俺も高校2年生の青少年だ、恋愛もしたい甘酸っぱい青春を謳歌したい、そんな希望もある。


佐伯さんと近しくなりたい、あわよくば手を繋いだりなんて...

そんなことを考えながら、先生に頼まれた雑務をこなし、先生の手伝いで物を教室まで運んだりしていると気がつけば夕方になっていた。


「本庄、いつもありがとうな!気をつけて帰れよ!」

担任教師からの言葉を受けて、帰ることとなった。


「もう夕方かあ、早いなあ。」

学校の階段を降りながら俺が呟く。今日はいつもに比べて結構長く、夕方から夜に変わりそうな頃合だった。


下駄箱で靴に履き替え、正面の扉から外へ出る。

―ん?

見覚えのある顔が何やら学校の裏に行くのが見えた。

「たしか、あれは図書委員の巫 (かんなぎ)?」


確かに今歩いていった少女は、短髪で眼鏡をかけた、いつも目立たない図書委員の巫 渚(かんなぎ なぎさ)だった。


校庭の裏に何しに行くんだ?

俺は気になって、悪いとは思いつつ後をつけた。


そこには、何やらマントのようなものを着て、フードを被り、魔法陣?のようなものの真ん中にたち何かを読み上げる巫の姿があった?


一体何やってんだ?俺は首を傾げた。

しばらく覗いてた。

すると、なにやら終わったのか、巫がフードをさげ、こちらに向かって歩いてくる。


うお!

内心叫びながら、咄嗟に物陰に隠れた。

そうして、巫は真っ直ぐに居なくなった。

巫の行動は全く俺には理解出来なかった。

―新しい遊びかなにかか?最近の遊びは複雑だなあ。


「やばい、俺も帰らないと!」

もうすっかり遅い時刻になっていた。

この時の俺にはそれぐらいしか思いつかなかった。

この後、大変な事態が待っていると知らずに。


―――

「遅いじゃないの!もう!」

自宅に帰ると怒った母さんが、いた。

いつも優しいが、キレると怖い母さんだ。


「先生の雑用付き合ったんだから、仕方ないだろ。」

と、俺は言いつつ母さんの作った、飯を食っていた。


「あ、お兄ちゃん!結愛の唐揚げとったでしょ!ひとつ減ってるもん。」

隣に座ってるのは妹の結愛(ゆあ)だ。

今年中学1年生になった。元気でうるさい妹だ。


「おいおい、取ってねーよ」

呆れながらそう返す。唐揚げがそんなに欲しかったのかよ、と内心思っていた。食べ物の恨みは怖い怖い。


「え?じゃあ、誰が?」

結愛がキョトンとする。


「ごめんごめん、結愛、パパがひとつ多く食べちゃったみたいだ。」


こちらは父さんだ。いつも優しくて穏やかな性格をしている。が、ちょっと抜けてもいる。

今日は、妹の唐揚げを食べてしまったようだ。


「もう!パパったら!」

結愛が頬をふくらませて怒る。

家族全員に笑いがこぼれた。

こんな日常が毎日続いたらと思っていた。


食べ終わり、階段を上がり、自分の部屋まで帰っていると不可思議なことが起こっていた。


―なんだ、この光は?


自分の部屋の扉からものすごく青白い光がもれていた。

急いで扉を開ける。そこには少し幼く見える、銀髪の少女が立っていた。

目は深紅の色をしている。


「だ、誰だ!!」

思わず俺は叫んだ。


「なーに?自分から名乗るのが礼儀じゃないの?」


少女はそういった、俺は驚きすぎて言葉を失っていた。窓は全開で夜の風がカーテンを揺らしていた。

部屋には月の光が立ち込めていた。

少女の背中には悪魔のような羽が生えていた。

―人間じゃ...ない


「まあ、いいや。あんた今日見たでしょ」

少女は唐突にそう俺に喋りかけた。


「見た?なんの事だ?」

俺は困惑した、一体俺が何を見たというのだろう。


「だーかーら、星降らせの儀式よ!見たでしょ!」

少女は、なおも強く言いつのった。


「は?なんだって?」

俺が見たのは、佐伯さんの走って帰る時に見た翻るスカートの丈、じゃなくて、たしかクラスメイトの巫が、おかしなマントを着て...ん?


「だから、今日魔法陣を使って星降らせの儀式をしてるのを見たでしょ!」

少女は、フンっと鼻を鳴らしながら言ってきた。


「星ふらせの儀式?」

俺は首を傾げていた。確かに儀式っぽいものはみた気がするが、星降らせなど聞いたことがない。


「その名の通りよ、星が降ってくるわよ、地球に。」

少女は俺が理解出来ていないのを悟ったのか、そう答えた。


「は?なんだって。」

俺は混乱していたのが、一気にクリアになった。星降らせ、てそういう意味か!


「そう、そして星の衝突を止められるのは、わたしヴァンパイアか、星降らせの儀式をした張本人だけよ。」


俺は分からないことが多かったが、足りない頭でこの少女の言動をまとめた。巫が校庭裏でやっていたのは星降らせの儀式?というやつで、星が地球に降ってくるということ、

そして少女はヴァンパイア?で、衝突をとめられるということ?

他に衝突をとめるには張本人の巫をとめること?


「な、なんだよ、それ!」

思わず俺の喉をついて出た。星が降ってくる?地球滅亡?みんな死ぬ、てことか?そんなのごめんだ!


「100日後に星が降ってくるわ。だから―――


私の機嫌を取りなさい!」


この少女、いやヴァンパイア?は言い放った。


「いや、なんで俺が」

どうして俺がそんなことをしないといけないのか、どうして急にこんなことになったのか全く訳が分からない。


「いーけど、地球滅ぶわよ?」


こうして、俺とひとりのヴァンパイアとの出会いが始まった。

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