第6話 キツネ、外の世界へ。

「こ、こわ…?え?」

壊れたってことはつまり、俺は一生このままってこと?

「おおぉい!俺を元に戻せぇぇぃ!」

俺は妹に飛びついた。

しかし妹の7割程の背丈になった体じゃ、ただじゃれついてるだけにしかならない…。

「こら、あばれないのっ!」

「きゃふぅっ!?」

尻尾に強烈な感覚が走り、俺の体がビクっと跳ねる。

「敏感な体してるなぁ…えちぃなぁ。まぁそれはさておき、そもそも壊れた原因はお兄ちゃんにあるよね?」

妹は怒りながら、それ以上にニヤついた笑みを浮かべている。

「そ、そうだけど!じゃあどうするってのさ!?一生このまま!?」

俺はパニックになって意味もなく四足で妹の周囲を駆け回る。

「慌てないの。……んー、修理は無理か。これは、新しく作り直すしかないかなぁ」

「じゃあ今すぐ作ってくれ!」

妹に情けなく懇願する俺。

「無茶言わないの、天才とはいえなかなか作るの大変だったんだから、これ」

「わふっ…」

妹は俺の両耳を両手で掴みながら、続ける。

「まぁー、折角の機会だしさ、しばらくその体を楽しんでみたら?」

「…楽しむって」

「だってさー、キツネになるなんて異世界転生でもしなきゃぁ有り得ないんだよ?そう考えたら貴重な体験じゃない?」

まぁ……確かに。そうかも。

「そうと決まればさ、今度は1人で外歩いてきな?ご飯なら帰ってきた時に用意するからっ」

「…分かった」

なんか上手く丸め込まれたような気がするけど、それ以上にこの姿で1人外を歩く事の好奇心の方が大きかった。それでま散歩は流石に恥ずかしかった、まぁ一人なら多少は大丈夫…かも。

「じゃあ、行ってくる」

「暗くなったら帰るんだよー」


かくして俺の野良キツネ体験が幕を開けた—


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