64話 合格発表
「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!合格だよ合格!」
「そのようですね。俺の方もしっかりと合格をすることが出来ています」
学園への合格発表というものは、日本で言うところの一昔前の大学合格発表のように大々的に張り出されるような形となっている。人数が人数であるため普通ならば自分の番号が歩かないか探し出すのに一苦労するのかもしれないけど.....そんなものは私たちの動体視力と思考能力を前にすれば関係ない。
私レベルになれば、一瞬でどこに何が書かれているのかを把握することのできる魔法を新しく創り出すことが出来るし、そもそもとして前に一度だけそういった魔法を使う機会があったから、現存している。
それを使ってしまえば、本当に一瞬で判別することが出来ると、そういうわけだ。ずるをしているとは思いつつも、私の能力を自分のために使っているのだから問題ないと、探すのに一苦労をした先で喜んだり、憂鬱な気分になっていたりする他の受験生を横目にしながら自分に言い聞かせている。
「帰ったらアンゲロスと、あ、あとあっちに残ってるアーゼさんとトウハクにも連絡入れないと!」
これ以上ない程に、自分の気分が高揚しているということは嫌でも気づいてしまう。あっちでは、高校生で終わってしまったし今までの人生の中で学校に通う機会なんてものは時代背景だったり役職だったりのせいで通うということが物理的に不可能だったため、目的の学校に受かるということがここまで嬉しくなる行為だとは完全に想定外であった。
なんてことのない普通の経験、と言ってしまえばそれまでかもしれないけど私からしてみればとても貴重で.....何事にも代え難い経験であるということは間違いがない。
「俺が合格しているのは当然だが....なぜ首席じゃない?!学園の馬鹿どもは、何を考えているんだ!!」
とまぁ、喜びに浸っていた私なのだが....そんな声が聞こえてくると当然不機嫌になる。なんとなくで予想をすることはできていたけど、聞きたくもない声をここにきてまで聞く羽目になってしまうとは.....それに、喚いている内容というのもあまりにも幼稚すぎる。
本当に、私と同い年なのだろうか?
「あれは.....」
「私の言ってたクソ野郎。あまりにも幼稚すぎるというか....」
王族の権力とかで、合格にはしてもらえたのかもしれないがあの程度の男の順位なんてものはたかが知れている。視たときに伸びしろなんてものが存在していないということは把握済みだし、今の実力もアーゼさんどころか、こっちの世界に来たばっかりの私にすら及んでいない。
今の基準がそれ以下、ということはもちろん知っているのだがこの学年には聖女ちゃんという私だったりハクオウだったりを除いた中で人間離れしているステータスの持ち主がいるのだから首席になることが出来るわけないと。
それに、言ってしまえばあれだがどう見ても実技試験の点数を筆記試験の点数でカバーすることが出来るとは思えないわけで。
「ま、あんなのとは関わらないほうが吉よ」
「そうですね。あの手の救えないバカというのは魔族だけではなく人族にもいるとは.....」
天使とか神とかにも救えないバカはいる。思わずそう言いかけてしまったのだが.....さすがにこんな大勢の人間がいる中でそう言ったことを話すわけにはいかないと、ギリギリのところでなんとかとどまることが出来る。
もう、王都に来てから1度暴れてしまっているのだか流石にこの短期間でもう1度暴れるわけにはいかないと。あの時は仕方が無かったということで、何とかアンゲロスからのお咎めはなかったけど.....今度やってしまったらと考えれば恐ろしいことこの上ない。
「さて、アーゼさんとトウハクに伝えないとだし.....さっさと帰ろうか」
「了解です」
目立たないように、静かに移動を開始する私とそれについてきてくれるハクオウ。順位の確認は.....まぁ、別にそこまで高いとかそういうわけじゃないだろうし確認はしなくてもいいでしょ。
今は、一先ず学園に通うことが出来るという事実を噛みしめながら帰ればいいだけ。初めて、誰にも縛られることなく誰からの命令を受けることもなく.....私の意思でこういったことをすることが出来るという幸せに。
「ふーん。あれが今年の首席、
「実技100点、筆記100点の、満点合格だったかしら?平民、ってことはこの学園の目的を知らないみたいだけど.....可哀そうなことね」
この時の私は、確実に浮かれていた。だからこそ、自分たちに近づいてきている闇に悪意に気づくことはできない。私たちのことを狙って、蝕もうとしてきている悪意といううものは誰に求めることはできない。
その先に、待ち受けている未来が破滅だとしても。絶望の未来以外に存在していないのだとしてもう止めるだなんてことは私達には決してできないのだから。
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