62話 現代の聖女
「大丈夫でしょうか?第二王子サマ?」
「ひぃ....」
きっと今の私は黒い笑みを浮かべていることだろう。時を止めている時の記憶は当然ながら私以外に持っていない。アンゲロスならば、認識することが出来るのかもしれないけど.....この時代の人間には結局のところ関係のない話であり私のあれが、見られているなんてことは考えなくてもいいのだろう。
だからこそ、何食わぬ顔で私は笑顔を浮かべる。記憶は完璧に消してはいるものの、根源的な恐怖というものは多少強引な手を使わない限り消すということが出来ないのだから私の姿を見たクソ野郎は軽く悲鳴を上げることになってしまう。
まぁ、それはそれとして今の私はきっと黒笑みを浮かべていることだろうから別の理由も含まれているのかもしれないけど。そこは気にしたら負けというか、そんなわけがないと自分で自分自身に言い聞かせているからこそ私は何んにも気にしてないけど。
「ラ、ラグナ様どうかなさいましたか.....?」
聖女ちゃんは、そう言いつつも、私の方をどちらかといえば心配をしてくれている。クソ野郎のことも心配してはいるようなのだが.....恐らくこういったことになるというのは結構よくあることのようでありだからこそ、対処に成れていといったところなのだろうか?
可哀そうである、とは思うことが出来るけどそれと同時にどこか彼女に対して警戒をしている.....なんて私の心もどこか存在してしまっている。まぁあんな言葉を聞いてしまった手前、私がこの聖女ちゃんのことを警戒しないわけにはいかない。
それに、少なくとも私は聖女ちゃんが転生者であるということを知ってしまっているのだから聖女ちゃんが、どういう存在なのかということに心当たりがついてしまっていうわけだ。問題は、聖女ちゃんが
まぁ、今の私には関係がない。ここにいるリース・メテンソマという存在は元勇者で聖女で、大賢者で魔王で.....七瀬楓というイレギュラー的な存在なのだから。
「ば、っ.....ばばっ....化け物....!」
心の底から、怯えているといった様子を見せているクソ野郎だが何も思わない。自業自得なのだから、それぐらいは甘んじて受け入れてほしいものだ。とはいっても、そんなこと言っても何も伝わらないのだから。
記憶がないというのは厄介である。私がやったことなのかもしれないけど....まぁ、それは気にしないとしても、もう一度お仕置きをするのは流石にまためんどくさいことになってしまうから憚られてしまうわけではあるし.....
「ラグナ様.....初対面の方に化け物呼ばわりは失礼ですよ?」
「エ、エヴァン!だがこ、っ....こいつは....」
ガタガタと、奥歯を震わせながら聖女ちゃんの言葉にすらも耳を貸さないで私にずっと怯えている。この程度の存在の行動に感情を揺さぶられるというのはだめなのかもしれないけど.....さすがの私でも傷ついてしまうというか、イラついてしまう。
さっきからずっとイライラしているって?.....そんなのは気のせいに決まっている。私の心は海よりも広い心を持っているのだから、この程度のことで怒るわけが普通はない。
「はいはい、言い訳はあとで聞きますよラグナ様。それよりも実技試験の時間が近づいてきていますので.....」
さっさと行きますよと。どこか黒い笑みを浮かべているようにも見ることが出来る、聖女ちゃんに連れられてクソ野郎の姿は完全に見えなくなっていく。あれだけで力関係がなんとなくわかっては来るのかもしれないけど......警戒をしないことに墓アリがない。
なにせ....
〈ステータス〉─────────────
エヴァン・アティ(
体力:5612/6000
魔力:29万/29万
攻撃力:291
俊敏:424
防御力:579
魔法防御力:5万
幸運:200
スキル
光魔法LV.Ⅴ、聖魔法LV.Ⅴ、魔力制御LV.Ⅹ
称号
異世界人、転生者、聖女、女神の使者
─────────────────────
「こんなステータスを見せられたらね....」
この時代の人間にしては、明らかに魔力の量がおかしい。私が知っているこの時代の人間の中でも最高峰の魔力を持っている、アーゼさんとペインさんの両名の魔力を優に超えている。私からしてみれば、塵に等しいということには変わりがないけど....何かがある。
そう思わずにはいられないようなステータスをしているわけであり、それはまるで.....どこかの物語、或いはゲームの主人公のようにも感じることが出来る。
少なくとも、私はあれの正体が何かを察しているわけではあるけど.....それが吉と出るか凶と出るのかは私にはわからない。何も起こらない、ということをただただ祈ることだけしか、何も起きていない以上私にはできないのだ。
「さーて.....私も、少し休憩しますかね」
とはいっても、何かが起こるとしてもそれはまだまだ先の場面であり今の私には関係がない。何かが起きてしまったときには未来の私に任せて、今の私は休憩をするだけでいいのだ。
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