47話 珍しく平穏に

「リース様がいるのに平穏ですね...」


「うん....正直私でも驚いている....」


 私が行くところ行くところで何か騒動が起こるのが割と当たり前になってきたのだが今回はまるで嵐の前の静けさの如く何も起こらなかった。逆に不安になってくるくらいには平穏である.....


「次は剣術の方ですかね?」


『あー.....うん。まぁ、大体わかっちゃったけど....』


 今までの傾向から剣術と魔法のレベルは大体同じようなものなので剣術もこのくらいレベルが低いのだろう。そう考えると正直見に行くのを躊躇ってしまう。

 これ以上レベルの低い剣術を視たくない....というわけではなく、これ以上現実を知りたくないというのが原因である。

 魔法や剣術のレベルが低いのはまだいい。しかし私としてはもう少しレベルが上で魔力の制御が簡単だと思っていた物なのでこれ以上現実を見たくないのだ。


『まぁですよね....私の方でもなんとなくで予想は付いていますし....』


 剣術のレベルに関して予想を付けているのは私だけではなくアンゲロスも同じらしい。まぁ、これにアンゲロスのそれに関しては私と違って長年生きているからできている芸当だろう。

 私はアンゲロスよりも一応長生きしているのだがそんなことできる筈がない。そもそもの話やろうとも思わないので出来るかどうか知らないというのが現状である。


『どうする?私にとっては現実を突き付けられるだけになるけど....』


 見に行くメリットもデメリットもないという状況なので正直どうするが悩んでしまう。ある程度の予想なのでそこは確かめる価値があるのかもしれないのだが私は魔法メインなので魔法さえ知る事が出来ればそれでいいのだ。

 剣術メインなのはハクオウなのでハクオウが行けばいいのだが今はハクオウが別行動をとっているので私とアンゲロスに行く意味は皆無と言っていい。だからこそどうするべきなのか本気で悩んでしまっている。


『まぁ行くだけ行ってみませんか?私達にデメリットはないので』


 行く意味は皆無なのだがだからと言ってデメリットがある...というわけではない。むしろこの時代の剣術のレベルを正確に知れるというメリットが少し存在しているので行けば得ができるのだ。

 まぁ、デメリットを上げるとすれば私が現実を見てしまうというものだけなのだがそれについてはアンゲロスは何も関係ないのでそんなことは私から言わない限り気にしないだろう。


『うーん...でもここで行くと何か嫌な予感がするんだよね.....』


 今の私の状況は嵐の前の静けさと言える状況であるのでここで見学に行ってしまえば何かが起きるのはほとんど確実である。それにもしも何も起きなくてもそれはそれでまた不安の材料が増えていくだけである。

 だからこそあまり行きたくないというのが私の本音である。


『取り合えずハクオウの事を探さない?私はそっちの方がいいかな.....』


 ハクオウが今何をしているのか。これも結構気になっていることなので話題をそらすにはかなりいい材料だった。無理やり話をそらしたわけでは無く気になっていることだったのでいつもみたいにアンゲロスに疑われる....なんてことにはならずに話題をそらすことに成功した。


『確かにハクオウが何をしているのか気になりますね....』


 反応がかなりいいのでこれはもう決まったも同然だろう。

 とはいっても別にここでどういわれようがハクオウを探すことはすでに私の中で決定事項なので実力行使でもされなければ思考を変えることは無い。というか実力行使をされても私に勝てる存在何てこの時代にはいないので最終的には考えを変えないという結論になるのだがそれは気にしないでおこう。


『そしたらいいよね?』


『そうですね。私も一応気になってはいますのでハクオウを探してみましょうか』


 アンゲロスも私の案に納得してくれたのでもうこれで決定である。

 まぁ、だからと言って何だという話なのだが私にとってはかなり重要な話だったので無事に決まって本当に良かった....

 そんなことを思っているとすでにアンゲロスが歩き始めていたので私も少し急ぎ目にアンゲロスの後をついていく。本当にハクオウは今何をしているのか?それが気になるばかりである.....

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