43話 実家からの依頼

「ああ、メテンソマ公爵家の方々が王都に来るみたいでな。その護衛の依頼を俺たち冒険者にしてきたというわけさ」


「成程...」


 どんな依頼が来てもクリアできる自信を持っていたのだがこれは完全に予想外の依頼である。戦闘系なら絶対にソロでもできるのだがこれは無理の一言である。まずバレないようにするのはできるかもしれないが私のメンタルでは絶対にバレるので受けたくないというのが本音である。

 いや、最悪お母様とお父様だけならばバレない可能性はあるのだがお姉様がいるとなると話は180°変わってしまう。お姉様なら今の私でも見抜いてしまう可能性がめちゃくちゃ高いのだ。


「どうする?メテンソマ公爵家だけあって依頼料はそこそこ高いが....」


「うーん....どうしましょうか....」


 依頼料が高いのは確かに魅力的ではあるのだが正直お金に困っていないというのが現状であるし、お金と私の正体を隠す事、その2つを天秤にかけるとやっぱり私の正体を隠す方に向いてしまっている。

 これなら依頼を受けない方が私としては得があるのだが....依頼を受けてみたいという気持ちがあるのも本当である。私だって成長をしているのでお母様とお父様相手にもだます事が出来ると言う事を証明したいのだ。


「いやなら大丈夫だぞ?」


「いや、受けてみます!」


 思考時間僅か数秒。適当かもしれないがこれでもかなり考えた方なのでいいだろう。それに最終的に幸も不幸も私が受けることなので他人に迷惑は掛からないし問題はない。

 それに被害があるとしても私の正体がバレるだけなので正直あんまり被害はない。


「く、食い気味だな....」


「いつから開始なんですか?」


 一度吹っ切れてしまった私が止まることは暫くない。もうどうとでもなれ!と考えてしまっている私が止まることは無くいつ始まるのか、それをサファーさんに問い詰める。

 私の変わりように驚いているのかどうかわからないのだが少し引いている感じがある。しかしそんなことは割とどうでもいいので無視して更に私は近づいていく。


「到着するのが明日だから、明後日になるな教えてから離れてくれ!」


「明後日ですか....」


 明後日ならばアンゲロスとハクオウに伝える時間はあるし少しだけなら相談する皓も出来ると思うので丁度いいだろう。アンゲロスはこういうときにも物凄く頼りになるので本当にいてくれてよかった....


「それじゃあ私はここで!」


 依頼の内容は既に資料で読んで完全に覚えているので問題はないし、いつ依頼が始まるのかも確認する事が出来たので私は嵐のような速度で去っていく。本当に私は色々とあれだなーと自分でも思ってしまったのは内緒である。


────────────────────


「と言う事がありまして、私はメテンソマ公爵家からの依頼を受けることにしました」


「成程....」


 宿に戻ることはアンゲロスの魔力を辿る事が出来たので一瞬で特定する事が出来たのだが、その場所がギルドから滅茶苦茶近かったので色々とめぐって寄り道していたら帰ってくる時間ギリギリになってしまったので危うく怒られてしまうところだった。

 勿論ちゃんと時間までに帰ったので怒られることは無かったのだが後1分と滅茶苦茶ギリギリの時間でここに来たので怒られる寸前だった。というかほとんど起こっている状態だったので普通に怖かった....


「でしたら私も影から同行させてもらいます」


「本当に?!それなら私も安心だよ」


 アンゲロスが影から見ていてくれるのならばこれ以上安心できることは無い。というか私の正体がバレる可能性が無くなったと言っても過言ではないので本当に安心する事が出来るのだ。

 最近アンゲロスに頼り切っているような気がするのだがそこはもう気にしたら駄目である。


「それで明後日という話ですが明日は何をするんですか?」


「うーん....一応申請すれば学園を見学できるみたいだし明日は見学にってみようかな?」


 私はここに来るまでにただ寄り道をしていたわけではない。一応情報を集めながら来ていたのだ。

 その過程で学園が申請...というか身分証を見せて犯罪者じゃなければ見学をする事が出来るということが分かったので明日はそれに行こうと思っている。

 万が一お姉様に会ったとしても記憶操作でどうとでもできるので危険はほとんどない。まぁ、お姉様に記憶操作を施したくはないのだがそれでもバレないためには必要と言う事という風に割り切るのが一番だろう。


「そしたら俺も言っていいですか?」


「ハクオウも?」


 何故?と一瞬思ったのだがハクオウも学園を受験するので確かに学園について色々と知った方がいいのだろう。

 本当にハクオウは真面目である。もしも私ならば暇つぶし以外に目的はないのでハクオウみたいなことをすることなど絶対にない。だからこそハクオウの事は普通に凄いと思う事が出来る。


「はい。俺も学園の知っておきたいので出来ればでいいですか....」


「いいよいいよ!」


 私の予想は当たっていたらしくハクオウは学園について知りたいから私についてきたいとのことだ。アンゲロスも影から見守ってくれるだろうしこれで実質的に全員が行くと言う事になる。

 これで明日の予定は決まったし早く眠るとしておこう....

 

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