42話 慣れは恐ろしい
「それで、お前は何をしに来たんだ?」
「いや、普通に依頼を受けに来ただけですよ?」
そう私が言うとサファーさんと私の間に長い沈黙が流れる。
え?いや、私本当にどう思われてるの?!これ絶対に碌な事しか考えていない沈黙よね?
「私本当にどう思われているんですか?」
「...すまん。ペインに聞いていた性格からかけ離れていてな」
本当に私どう思われているのだろうか?
サファーさんはペインさんから私の事をお人好しの変人と伝えられていると言っていたのだが絶対にそれ以上の何かを伝えられている気がする。だって変人だけならこんな反応にはならないはずだ。こんな滅茶苦茶長い沈黙が起きるなんてそうそうなと思うしマジで何を伝えられたのだろうか....
「ああ、そのなんだ。破壊神とペインとアーゼに伝えられていてな....」
「破壊神って....」
アーゼさんも加わっていたという驚愕の事実があったのだがそれ以上に私は破壊神とされていたらしい。
確かに魔神化をすれば神になれるのだがそれはあくまでも魔法と邪悪の神である。破壊神ではないしそもそもの話ペインさんとアーゼさんの前で魔神化をしたことは無い。それでも私が神と言うのはあっているので結構的を得ているともいえる。
「お前が悪いやつではないと言う事は理解できたし、話と違うという事も理解する事が出来た」
「ありがとうございます....?」
褒められたのかどうかわからないのだが一応褒められたような気がするのでお礼をしておく。まぁ、これで違ったとしてもペインさんとアーゼさんのせいで私は変人という風になっているので特に問題はないだろう。
私の気持ちは大ダメージを追うことになるのだが....
「というお前こういう状況になれているのか?そういう感じの雰囲気をさらしだしているが...」
「あはは、慣れって恐ろしいんですよ?もう私は慣れたのでこの程度の事じゃあどうとも思いませんよ」
既に何回も何回も何回も同じような事を経験してしまっている私はこの程度の事で動揺することは無いし驚くことなんてもっとない。そんな私の様子を不自然に思ったのかどうか知らないのだが少なくともさっき言った理由から私は驚くことは無いので言われたからなんだ、という話である。
本当になれとは恐ろしい物である....
「そ、そうか.....それでお前はこれからどうするんだ?」
「さっきも言いましたが依頼を受けて後は学園の試験ですかね」
まずは依頼を受ける、これは既に確定事項なのだがそれ以外には後学園のあるかどうかわからない試験を受けるしか決まっていない。というかその試験すらあるかどうかわからないので決まっていないという状況に私はいる。
つまりは暇なのだ。勿論そんなこと言える筈もなく取り合えず見栄を張っているという状況だ。
「それ以外には?」
「まだ決まっていませんね」
見栄を張ろうとしたのだがそんな私の試みはサファーさんの言葉一つですべて砕け散ってしまった。サファーさんに悪気などはないんだろうけどそれでも私の努力が無になってしまったのは許せないことである。
「そうか....まぁ、試験勉強がまずは最優先だろうし頑張れよ」
しかし私が見栄を張ろうとしていることにサファーさんが気付くことは無くむしろいい感じに勘違いをしてくれたため私としては嬉しい限りである。尤もこの勘違いがずっと続くという確証はないので早々に話の内容を変えるのが得策だろう。
「それで、私におすすめの依頼とかありますか?」
「Aランクにおすすめの依頼か...少し待ってろ。調べてくる」
露骨な話題逸らしだったかもしれないがそれでも話題を変えることに成功したのは変わりないのでよしとしておこう。それに今重要なのは話を逸らす事だた一つだけなのでそれを良し悪しなどは特に関係ないのである。
話題をそらす事が出来たのでよし。そうポジティブに思考しておくことが大事なのである。
「アーゼが来るのももう少しだしこんな依頼なんかどうだ?」
10分くらい時間が経った頃にサファーさんが1つの書類を持って戻ってきた。書類1つに10分もかかるのか?と思ってしまったのだがそれはまぁ、片付けが出来ない人だって世の中に入る....というか私がその片づけをできない人なので時間がかかる場合だってあるのだ。
まぁ、少なくとも紙1つ見つけるのに1時間くらいかかる私に比べて圧倒的に速い速度で来たと言う事は私ほどひどい...というわけではないのだろう。
「それってどんな依頼なんですか?」
まぁ、そんな割とどうでもいいことは置いといて私もサファーさんが持ってきた依頼の内容には少し興味があるのでどんな内容なのか聞くことにしてみた。一応私はAランクなのでそこそこ難しい依頼が来るのだろうか?できれば普通に歯ごたえのあるものが来るといいのだが....
「最近入った依頼でな。依頼者的に高ランクの冒険者の方が勝手がいいんだよ....」
どこか遠い目をしているサファーさんを横目に私はその書類を目に通すのだが....
「え....?メテンソマ公爵家?」
その依頼主は私の実家であるメテンソマ公爵家だった....
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